アイコンタクトの長さをコントロールする演習は、自撮りによる演習が最も効果がある。自己紹介でも、仕事紹介でも、趣味の紹介でも、休暇の過ごし方でも、話す内容は自分に関する内容であれば何でもよい。自分に関する内容に限るのは、考え込んだり、思い出しながら話すような内容ではなく、すぐに言葉がでてくるような話しやすい内容にするということだ。
時間は1分で十分だ。1分間、相手に対して、その話をする。それを、自分の顔が全面に映るくらいにスマホをセットして自撮りする。話が終わったら、それを再生して確認する。確認するポイントは、話の内容や声の程度ではなく、相手を何秒見つめ続けて話していたかだ。目を逸らすたびに、カウントしなおし、1回目のアイコンタクト何秒、2回目のアイコンタクト何秒というようにカウントしていき、平均秒数を出す。
そして、2、3秒を境に、長い秒数のアイコンタクトだった場合に、聞き手になったつもりで自分がどのような印象を持つか? 短い秒数だった場合に、聞き手にしてみたら、どのような気持ちになるかを感じ取る。再び、2、3秒のアイコンタクトを心がけて、自撮りしながら、相手に1分間話す。これを数回繰り返すと、2、3秒のアイコンタクトの頻度が高まる。
この演習をしていて、よく受ける質問に、「2、3秒秒でアイコンタクトを外すということは、グローバルスタンダードでしょうか?」というものがある。私が日本はもとより、欧米やアジアで各国のビジネスパーソンと演習した際の参加者は、2、3秒から5、6秒のアイコンタクトに引きつけられやすかった。この演習経験をふまえれば、私はこれがグローバルスタンダードだと考えている。
もっとも、日本人でも外国人でも、いまだに「相手が目を逸らすまでは、目を逸らしてはならない、それがビジネスパーソンのスキルだ」と信じていて、じっと見つめ続けてくる人がいる。ビジネス上の付き合いの人同士では、それは、はた迷惑なことだ。
質問:存在感を発揮できない
相手と話していても、相手が聞いているのかいないのかはっきりしていないことが多く、相手を引きつけることができていないように思えます。周りの人を引きつけて、存在感を発揮したいのですが、そのような方法はないでしょうか?
回答:相手を見つめる秒数が短すぎる
相手を引きつけることができていないと感じる場合は、相手を見ていないか、見つめる秒数が短すぎる可能性があります。
また、相手を見ていたとしても、まばたきを頻繁にするくせのある人は、相手が話に集中できなくなるケースが多いのです。2、3秒のアイコンタクトを心がけるとよいでしょう。
一方、アイコンタクトが長すぎると、相手に抵抗感を与えてしまい、その場合も相手を引きつける効果が発揮されません。
【山口博[連載コラム・分解スキル・反復演習が人生を変える]第126回】
【山口 博(やまぐち・ひろし)】グローバルトレーニングトレーナー。モチベーションファクター株式会社代表取締役。国内外企業の人材開発・人事部長歴任後、PwC/KPMGコンサルティング各ディレクターを経て、現職。近著に『
チームを動かすファシリテーションのドリル』(扶桑社、2016年3月)、『
クライアントを惹き付けるモチベーションファクター・トレーニング』(きんざい、2017年8月)がある