お金をかけずに自分でできて効果抜群、健康寿命を伸ばす「断熱DIY」
次は障子の断熱だ。まず木枠のサイズに合わせて切り抜いたポリカーボネイト板を、障子の枠にはめる。ポリカーボネイト板とは、ホームセンターなどで売っているプラスチック製の中空板のことだ。そのポリカーボネイト板を固定するため、上から細い木枠をビス止めする。最後にポリカーボネイト板の前後に新たな障子紙を貼りつける。
これで、障子紙、ポリカーボネイト、障子紙という順番で、3つの空気層が並ぶことになり、障子1枚に比べて飛躍的に断熱性能が高まる。施工後は、外気に冷やされた窓面の冷気が、この空気層により障子の表面には伝わってこないため、参加者はすぐに効果を体感することができた。
ワークショップを主催した、川崎市まちづくり局の担当者はこのように言う。
「参加者の方たちはだんだん前のめりになって、現場は熱気であふれました。座学と実践を通して、断熱の効果や重要性を実感していただけたようです。今後も、このようなワークショップをできるだけ続けていきたいです」
参加者の評判は上々で、アンケートには「自宅や実家、知人の家でもDIYによる断熱をしてみたい」と回答した人が9割に達したほか、「断熱化の効果を周囲に広めたい」という回答も多かったという。市の担当者は、「今回のワークショップをきっかけに、既存住宅の断熱化を効果的に広げていくための方法を今後さらに検討していきたい」としている。
ワークショップで講師を務めた建築士の内山章さん(エネルギーまちづくり社取締役)は、これまで数多くの断熱改修を手がけてきたその道のプロフェッショナルだ。内山さんは、自治体と連携した今回の試みに手応えを感じたと言う。
「ぼくたちがなぜワークショップをやるかと言うと、断熱の重要性を体感する場を増やしたいからです。冬に家が暖かくなると病気になりにくくなるだけではなく、家全体が暖かくなることで家が広く使えるようになったり、睡眠の質が向上して朝の目覚めが良くなったりするなど、暮らしの質が向上します。
でもほとんどの人がその暖かさを体感していないため良さを実感できず、住宅の断熱化は普及してきませんでした。ワークショップのような場で体感をすると、その重要性が実感としてわかるようになります」
断熱リノベーションワークショップは、2016年から内山さんが理事を務めるNPO・南房総リパブリック(千葉県)が中心となって広めてきた。ワークショップには全国から参加者が集い、最近ではその卒業生が全国で断熱DIYワークショップを手がける事例が増えてきている。内山さんのエネルギーまちづくり社では、今後もこのようなワークショップなどを手がけながら、自治体と連携して住宅の断熱化を強化していきたいとしている。
断熱リフォームと言えば、お金のかかる工事が必要とのイメージがある。しかし、このワークショップのように、個人がホームセンターで手に入れる素材だけでできるレベルでも十分に効果はあげられる。寒さで健康を害するような住環境を変えるために、今回紹介した団体にアクセスしたり、自分で調べたりするなど、断熱DIYを手がけることを検討してもよいのではないだろうか。
◆ガマンしない省エネ 第12回
<文/高橋真樹>
ノンフィクションライター、放送大学非常勤講師。環境・エネルギー問題など持続可能性をテーマに、国内外を精力的に取材。2017年より取材の過程で出会ったエコハウスに暮らし始める。自然エネルギーによるまちづくりを描いたドキュメンタリー映画『おだやかな革命』(渡辺智史監督・2018年公開)ではアドバイザーを務める。著書に『ご当地電力はじめました!』(岩波ジュニア新書)『ぼくの村は壁で囲まれた−パレスチナに生きる子どもたち』(現代書館)ほか多数。
<写真提供/川崎市まちづくり局>
体感すればわかる、断熱の効果と意外な手軽さ
断熱リフォームはDIYでもできる!
ノンフィクションライター、放送大学非常勤講師。環境・エネルギー問題など持続可能性をテーマに、国内外を精力的に取材。2017年より取材の過程で出会ったエコハウスに暮らし始める。自然エネルギーによるまちづくりを描いたドキュメンタリー映画『おだやかな革命』(渡辺智史監督・2018年公開)ではアドバイザーを務める。著書に『ご当地電力はじめました!』(岩波ジュニア新書)『ぼくの村は壁で囲まれた−パレスチナに生きる子どもたち』(現代書館)。昨年末にはハーバービジネスオンラインeブック選書第1弾として『「寒い住まい」が命を奪う~ヒートショック、高血圧を防ぐには~』を上梓
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