統計の信頼性回復のためには、政府と与党はまず「不都合な事実」に向き合え

3.事実解明に消極的な政府・与党

 このように問題は拡大してきていますが、毎月勤労統計の不正問題を審議すべく1月24日に行われた厚生労働委員会の閉会中審査(参照:国会PV 16分40秒~)では、与野党双方から、徹底した原因の究明、不正の全容解明により、膿を出し切ることが再発防止のために必要であるとの指摘が行われていました。  にもかかわらず、その後の国会審議では、政府は、基本的な事実関係さえ明らかにしない答弁を続けています。野党が求める基本的な資料の提出も、出し渋りが続いており、参考人招致も、なかなか認められない状況が続いています。これらは、事実解明に向けた政府と与党の消極姿勢を示すものです。  一例を紹介しましょう。1月24日の閉会中審査では、大串博志議員が、毎月勤労統計の不正な抽出と不正な復元をめぐる問題について、厚生労働省が設置した監察チームと特別監察委員会によるヒアリングの実施概要について、情報開示を求めました。  しかし、対象者の実人員数という基本的な情報でさえ、答弁を得るまでに何度も速記が止まり、混迷した答弁状況が続きました。  さらに、いつ、誰が、誰にヒアリングを行ったかの情報開示を求めた大串議員に対し、定塚由美子官房長は、処分につながるヒアリングであるため、一切出せないのが私どものルールであると答弁しました。  しかしこれは、言い訳でしかありません。そのことは、冒頭に紹介した裁量労働制をめぐる不適切なデータの比較について、昨年、厚生労働省の監察チームが行った調査結果の報道と照らし合わせても、明らかです。  これも処分につながるヒアリングでしたが、7月19日の報道発表資料には、ヒアリング対象者の役職や人数、ヒアリング実施者、ヒアリング実施日時が明記されています。処分につながるヒアリングだから詳細は開示できないという定塚官房長の答弁は、この前例と整合せず、情報を出さないための方便でしかないことが明らかです。  後に野党の追及により判明したところによれば、毎月勤労統計をめぐる調査は、事務方である厚生労働省だけがヒアリングを行っていたケースが多く、報告書の原案も事務方が作成していました。さらに、その報告書の原案を外部委員に示したのは、報告書がとりまとめられた1月22日当日であったようです。  労働政策研究・研修機構の樋口美雄(よしお)理事長を委員長に迎えた特別監察委員会は、1月17日と1月22日の2回しか開かれておりません。2004年までさかのぼり、経緯が複雑な毎月勤労統計の不正に対し、あまりにも短期間の調査しか行わず、組織的な隠蔽は認められなかったと結論づけたのです。  「お手盛り」の内部的な調査によって問題の収束が図られたことは明らかでした。その実態を隠すために、野党の事実確認に政府側が誠実に答えないことが、国会審議で繰り返されたのです。  しかし与党は、事実解明に消極的な政府の姿勢を、ただしませんでした。野党が求める樋口委員長の参考人招致についても、労働政策研究・研修機構の理事長としての出席しか認めていません。特別監察委員会がどのような問題意識でどこまで事実解明を行おうとしたのかも、明らかにされないままとなっています。
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浮上した「官邸の介入」
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