タイで増える「外国人狙い」の強盗。組織化と周到化で被害は増加

周到な計画とチームワークで強盗

 2018年10月に起こっている事件は、どれも下調べなどを行った上で、チームワークで強盗をしているようだ。バイクで流して見つけた相手を適当に襲うのではなく、事前に逃走経路などを確保した上で、その網にかかった外国人を襲う。  タイのギャングに関係した人物によれば、この犯人たちのほかにも外国人を狙う強盗たちがいると言う。しかも、外国人を襲う理由もしっかりとあってのことだそうだ。 「外国人旅行者ならタイのことがわからなくて、どんなに警戒していても彼らには隙ができるものなんだ。それに外国人ならタイ語ができない。だから、目撃者さえいなければ、襲われても通報するまでに時間がかかる」  すぐに通報できても、市井の一般タイ人や普通の警察官も英語ができないため、犯人の特徴を伝えるまでに時間がかかる。カネを持っているかどうかよりも、強盗の目線で言えば、外国人を襲うメリットは逃走時間の確保にあるのだ。  タイ人はよく外国人旅行者にカバンはたすき掛けにして持つように注意を促すが、それはあくまでもスリ対策でしかない。たすき掛けにしようが、政府要人が重要書類をアタッシェケースに入れた上に手錠で繋げていようが、最早そこは強盗にとっては重要ではない。強盗はケガをさせてでも奪っていくのである。  バンコクは賑やかで景気がいいように見えるが、実は不況のまっただ中とされ、特に低所得者層からその悪影響がじわじわと響いてきている。その中でギャングなどの素行の悪い若者が犯罪に走るようになってきている。彼らはない知恵を絞った結果、不況のタイ人よりも外貨を持っていそうな外国人を狙うようになった。  先にも述べたように、怖いのは我々日本人にも馴染みのあるエリアで強盗が起こっていることだ。対策としては遅い時間帯に人通りの少ない場所を単独で行動しないことしかない。ギャングの理屈ではタイ語ができる、あるいはタイに精通した外国人は襲わないということになるが、それもまた外見で判断できるものではない。
強盗被害に遭った男性

強盗に襲われてけがをしたタイ人男性

 だから、身を守る方法は深夜は単独行動を避けるということしかない。タクシーを利用するなら、店の前から乗り、降りるときは目的地の目の前。これくらいの警戒心があってちょうどいいのが今のバンコクである。 <取材・文・撮影/高田胤臣(Twitter ID:@NatureNENEAM)> たかだたねおみ●タイ在住のライター。近著『バンコクアソビ』(イースト・プレス)
(Twitter ID:@NatureNENEAM) たかだたねおみ●タイ在住のライター。最新刊に『亜細亜熱帯怪談』(高田胤臣著・丸山ゴンザレス監修・晶文社)がある。他に『バンコクアソビ』(イースト・プレス)など
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