水道法改正の「不都合な真実」。民営化なしでも健全経営は達成できる

岩手中部水道企業団

岩手中部水道企業団」は3市町の水道事業をまとめることで効率化に成功している

 ’14年に設立された「岩手中部水道企業団」は日本の水道事業改革の先駆けだ。岩手県の花巻市、北上市、紫波町3市町の水道事業を一括で広域運営している。菊池明敏局長は北上市役所職員だった’04年から「このままでは上下水道とも破綻する」と予測し、3市町の職員たちと協議を重ねた。3市町が単独で事業を続ける場合の右肩上がりの水道料金と、広域化した場合の安定した水道料金のシミュレーションに、最後は3人の首長も頷いた。  そもそも、日本の水道施設は水需要の減少で稼働率が50~60%台にまで落ち込んでいる。だが、「自治体の財産」の廃止は難しい。 「でも、広域化すれば遠慮なく無駄な施設をつぶせます。以前は3市町で34あった浄水場は29に(将来は21)、取水施設も36から32に減らしました(将来は23)」(菊池局長)  同企業団は設立後、すぐにダウンサイジングを実施。施設稼働率を80%台にし、水道料金も20㎥で3186円と安定供給している。
群馬県東部水道企業団

「群馬県東部水道企業団」は将来的に専任職員を置き、岩手中部水道企業団のようなプロ集団を目指している

 2例目は’16年に設立された「群馬東部水道企業団」だ。’12年に3市5町(太田市、館林市、みどり市、板倉町、明和町、千代田町、大泉町、邑楽町)の首長たちが広域化に合意した。浄水場は22から10に、配水池も47から33に減らす予定で、人員も設立時の97人から68人まで減った。その結果、群馬東部水道企業団での水道料金は値上げゼロを実現している。  この2例は企業団を設立しての水道事業改革だが、自治体が独自で改革をした事例もある。その先駆けは神奈川県川崎市だ。節水技術発達の影響で、’06年には給水能力100万㎥弱を持つ3つの浄水場が、実際に配水した量はその5割台。施設能力のダブつきは市の内部で課題視され、外部監査でも「給水原価を押し上げる要因」と指摘された。局職員は振り返る。 「それ以前から、過大な施設能力や老朽化、耐震化を何とかしなければとの危機感はありました。’06年に『川崎市水道事業の再構築計画』を策定し、『ダウンサイジング』、『老朽化対策』、『耐震工事』の3つをやろうと決めたんです」  市は’12年と’16年に2つの浄水場を廃止。給水能力は約76万㎥となり稼働率は約7割に上がった。
広域化で水道料金を安定させた例

広域化で水道料金を安定させた例・岩手中部水道企業団の設立前、菊池局長は水道料金の将来をシミュレーション。企業団運営が最安との予測に3市町の首長は広域化に頷いた

「年間約40億円の経費削減に繫がりました。うち30億円が浄水場にかかる人件費。公務員は解雇できないので職員の定年退職を待って人員減を実現しました」(局職員)  結果、値上げ必至だった水道料金は同一料金が保たれているのだ。
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大切なのは「住民参画」
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