鈴木市長“フライング出馬会見”、公明党は即決推薦も自民党は混乱
官邸主導の北海道知事選候補者選定で“暗躍”したと見られる菅官房長官
道政ウォッチャーは「前代未聞の候補者選考過程に目を向けると、官邸主導で決まったことと“公明党カード”が決定的だったことがよく分かる」と指摘する。菅官房長官と佐藤副会長コンビの関与が疑われる選考経過は次の通りである。
1)地元の自民党道連の大半の国会議員や道議は、地元経済界や市町村長らとともに和泉晶裕・国交省北海道局長を擁立しようとしていて、農水大臣に抜擢された吉川貴盛・道連会長の「鈴木市長ありき」の“官邸忖度選考”に対して「水面下での的な選考」と反発。執行部一任を拒否し、公平に議論をして決めることになった。
2)これに対して鈴木市長は選考途中の2月1日に“フライング出馬会見”に踏み切って自公への推薦要請を行った。その結果、保守分裂回避(一本化)を条件にしていた和泉氏を不出馬に追い込み、公明党推薦を会見当日に受けることになった。
3)道連の選考過程を無視した既成事実作りに和泉擁立派は怒り、第2の候補として橋本聖子参院議員に出馬要請。しかし、即断即決で推薦を出した公明党との関係悪化を懸念して出馬を断念。こうした混乱で、自民党が鈴木市長推薦を出したのは公明党推薦から8日後の2月9日のことだった。
道政ウォッチャーはこう続けた。
「“公明党カード”が素早く切られたことで、道連内多数派の和泉擁立派の動きを抑え込み、官邸の意向に沿った鈴木市長が自公推薦候補となりました。ただ、自民党推薦が公明党推薦より8日間も遅れたのは前代未聞です。しかも橋本参院議員が出馬を決断していたら、『自民党は橋本氏を推薦、公明党は鈴木氏を推薦』という自公分裂選挙となった事態もありえました。
そんなリスクを伴う即断即決の推薦決定を、公明党北海道本部だけでできるはずがありません。当然、中央の公明党本部とは調整済み。菅官房長官と懇意にしている、創価学会選挙担当の佐藤副会長が関与していたとしか考えられません」
まさに「菅官房長官と佐藤副会長コンビの、密室談義による“落とし子”が鈴木市長」という見方だ。官邸の後ろ盾をバックに鈴木市長が“フライング出馬会見”を断行し、その当日に公明党が推薦決定をしたことで、道連の決定権を剥奪して官邸の意向(結論)を押しつけた形になっているのだ。
“フライング出馬会見”にいち早く推薦をしてくれた公明党に、鈴木市長(左から3人目)は感謝の言葉を述べた
「鈴木候補の産みの親は、官邸主導で“公明党カード”を切った菅官房長官と佐藤副会長コンビ」という見方に立つと、鈴木市長が北海道知事選の3大争点(泊原発再稼働・カジノ誘致・JR廃線問題)で国策追随型となるのは当然だと思える。
「官邸主導で知事選候補となった鈴木市長が、安倍政権の方針と食い違う政策を打ち出せるはずがない。産み落としてくれた恩を仇で返すような“親不孝”な行動はしないのが普通です。鈴木市長が当選した場合、元官僚の高橋はるみ知事以上の“官邸言いなり知事”になるでしょう」(道政ウォッチャー)
実際、鈴木市長は出馬会見で泊原発再稼働については一言も触れず、菅官房長官肝いり政策のカジノ誘致についても「経済的にプラス」と明言。JR廃線問題でも石勝線夕張支線をいち早く受け入れたことを「攻めの廃線」とアピールした。
JR北海道の路線が廃線の瀬戸際にある苦境を受けて「リニア新幹線建設中のJR東海に政府が巨額融資をするのなら、JR北海道支援にも一部を回すべき」といった異議申立てを安倍政権にすることとはなかった。“産みの親”に泥を塗るような批判は控え、安倍政権の枠組みに収まる政策発表をしたようにみえる。
と同時に鈴木市長は、11日の苫小牧での公明党時局講演会で“産みの親”への感謝の気持ちが滲み出るような発言をしていた。2月1日の出馬会見直後に「唯一、手を差し伸べてくれたのが公明党なのです」と切り出して、聴衆から拍手が沸き起こった後、次のように続けたのだ。
「私は何としても公明党の皆様のご恩に勝利で答えなければなりません(拍手)。公明党とは政策協定をさせていただきました。私は、高校と大学、働きながら通わせていただきました。公明党は、党として力を入れている全世帯型の社会保障の充実、中でもとりわけ『教育の無償化』に力を入れてきた政党であります。
どんな方でも、どんな家庭のご事情があっても学びたい。そういう意欲に対して、しっかりと今まで政策を進めてきた政党であります。これは私自身が人生を持って、体験をしてきたことで、政策協定においても是非、この教育の政策については力強く現実のものに変えていきたい。そのように思っております(拍手)」