時代の警告を無視し、タイタニック号よろしく沈没しゆく大規模マンション達<競売事例から見える世界27>

バブル期に乱立したマンモスマンションは、もはや時代の残骸だ

 差し押さえ・不動産執行の仕事では度々足を運ぶことになるという地域も、幾つか存在する。  とは言え、このマンモスマンションほど足繁く通っている物件は他にないのではないだろうか。ここ半年を振り返るだけでも、今回で5回目になる。  該当のマンモスマンション建設計画が持ち上がったのはバブル絶頂期。  際限ない地価の高騰から都心に居を構えることが難しかった当時、郊外にはニュータウン構想が広がり、このマンモスマンションも今冷静に考えると「何故こんなところに」というメリットの見出し辛い場所に位置している。  1棟1棟にエレベーターが数機用意されるという巨大なマンションが、更に複数立ち並ぶというマンモスマンション構想。  計画ではマンション群を繋ぐ敷地の中央には豪華な噴水や小川、そして公園が設けられ、エントランスホールにはタイタニック号を思わせる巨大なシャンデリア。  また、エリア内にはプールを構えたジム、商店街、レンタルビデオショップなどが並び、駅までは専用の無料シャトルバスがピストン運行という実に夢のある計画。  このマンモスマンションは完成予想図のみで、完成とは程遠い状況ながらも分譲が開始されることとなったのだが……。  そのままタイタニック号よろしくバブル崩壊という氷山に衝突し、計画は再浮上困難な状況に。  初期の構想に飛びつき高額で分譲マンションを購入するハメになった第一次購入者は、一部完成に伴い渋々居住を開始するも、全体完成には程遠い状況のマンモスマンションはゴーストタウン化。  残りの完成している分譲マンションの投げ売りが開始され、第一次購入者層より大きなクレームが上がると一部返金騒動となった。  そして、建設業者が倒産。数棟が完成、数棟が建設途中の骨組みむき出しというトンデモナイ状況のまま、数年が経過。  その後バブル崩壊も落ち着き、ようやく引き継ぎ企業が現れるが、後戻りできない計画分のマンションがなんとか完成まで漕ぎ着けるのみに留まった。  しかし、これらの分譲マンションは新築として売り出すことが出来ず「新古住宅」として、第一次購入者の購入額から比べると4~5分の1という額で販売されることに。
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死ぬまで続く高利の住宅ローン支払い地獄
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