ドゥテルテ政権維持のためにネット世論操作するフィリピン
フィリピンにおいてもネット世論操作は当たり前のように行われている。大統領の
ドゥテルテがどのようにネット世論操作を行っているかはさまざまなレポートで取り上げられている。
フィリピンでのネット世論操作の目的は、
政権維持(特に麻薬戦争のウソの流布)である。トロール(人手で世論操作のために運用されるアカウント)を利用して
政府批判者を特定し、脅迫やいやがらせを行っている。麻薬組織との戦いという口実のもとに政府批判者の言論封殺などに利用している。
2016年には影響力のあるブロガー、ボット、トロールで構成されるドゥテルテ支持の組織によって選挙に勝利した。
政府が積極的にフェイクニュースを活用していることから、加担する人々には経済的メリットがある。
政府予算や大統領の機密諜報費がネット世論操作に使われているのだ。
同国内にはキーボードアーミーと呼ばれる実行部隊やクリックファーム、PR会社やコンサルタントなどネット世論操作産業とも言うべきものができあがっている。
ひとつずつ事例をあげてゆくときりがない。なにしろ昨年発表された『Challenging Truth and Trust: A Global Inventory of Organized Social Media Manipulation』(2018年7月20日、Samantha Bradshaw & Philip N. Howard)によれば世界48カ国でネット世論操作が行われているのだ。
もちろんその中でもロシアは多数の作戦を展開しており、それが欧米で研究されている。代表的な事例といっても差し支えないだろう。
世界中に広がったネット世論操作は選挙だけでなく、我々の社会のいたるところを蝕んでいる。
◆シリーズ連載「ネット世論操作と民主主義」
<取材・文/一田和樹>
いちだかずき●IT企業経営者を経て、綿密な調査とITの知識をベースに、現実に起こりうるサイバー空間での情報戦を描く小説やノンフィクションの執筆活動を行う作家に。近著『
フェイクニュース 新しい戦略的戦争兵器 日本でも見られるネット世論操作はすでに「産業化」している――』(角川新書)では、いまや「ハイブリッド戦」という新しい戦争の主武器にもなり得るフェイクニュースの実態を綿密な調査を元に明らかにしている