5記者の質問信号無視話法分析で明らかになる、官邸の望月記者へのハラスメント対応

菅官房長官信号無視話法分析

犬飼淳氏の信号無視話法分析動画より

 前回記事に続いて、菅官房長官の定例記者会見における東京新聞・望月衣塑子記者に対する質問妨害を取り上げたい。  今回は2019年2月8日午前の全8問の質疑を全て文字起こしして信号無視話法分析する。これによって、記者たちは簡潔に質問できているのか、管長官は質問に答えているのか、質問妨害は意図的なのか、改めて検証していく。  本記事の分析内容は約6分の検証動画として公開している。記事と合わせてご覧頂きたい。

2月8日菅官房長官会見を徹底可視化で分析

各紙記者質問概要【質問の概要】  当日の質問者は5名。質問内容は、冒頭の3名(朝日新聞オカムラ記者、日本テレビ ワタナベ記者、毎日新聞 タカハシ記者)は新元号選定に関連して計4問。次に1名(フジテレビ チダ記者)が韓国との2国間協議に関連して計3問。最後に1名(東京新聞 モチヅキ記者)が自らに対する上村秀紀 報道室長の質問妨害について1問、という質問構成であった。  ちなみに質疑が始まる前に菅長官が元号選定手続検討会議に関する読み上げを行っており、記者3名の質問が集中した新元号は政府としても質問してほしい話題であったと推測される。 配色ルール【配色ルール】各記者の質問内容を以下の配色ルールに沿って色分けする。 青信号:質問内容 黄信号:質問の前置き、質問に関係する背景 赤信号:事実誤認、認識不足 無色(通常の文字色。図版中は灰色):不要な言葉、似た言葉の繰り返し(読み飛ばしたほうが理解しやすい箇所)  望月記者に対しては、「質問に事実誤認がある」「自分の意見を延々と述べ続ける」「質問がまとまっておらず、意味がわからない」といった批判がされることがある。その批判が正しければ、望月記者は他の記者と比べて、黄信号や赤信号や灰色の割合が高く出るはずだ。  管長官の回答内容はを以下の配色ルールに沿って色分けする。 青信号:質問内容に対する回答 黄信号:回答に関係する補足 赤信号:論点のすり替え 無色(通常の文字色。図版中は灰色):不要な言葉、似た言葉の繰り返し(読み飛ばしたほうが理解しやすい箇所) 信号無視話法ビジュアル 先に結果をお伝えすると、記者の色別集計結果はこのようになった。 朝日新聞オカムラ記者 黄信号50% 青信号35% 無色15% 日本テレビワタナベ記者 黄信号26% 青信号59% 無色14% 毎日新聞タカハシ記者 黄信号11% 青信号82% 無色7% フジテレビチダ記者 黄信号49% 青信号48% 無色4% 東京新聞モチヅキ記者 黄信号79%青信号16% 無色5%  ワタナベ記者、タカハシ記者は黄信号の割合が少なく、無駄なく質問できている印象を受けるが、1人目のオカムラ記者と同じ新元号に関する質問をしたため、改めて背景を説明する必要がなく、すぐに質問に入れた点が有利に働いたと思われる。つまり、オカムラ記者やチダ記者のように約5割が黄信号になるのが標準的な質問構成のようだ。  だが、モチヅキ記者だけは黄信号79%と多い。モチヅキ記者について総括すると、赤信号(事実誤認、認識不足)と思われる内容は他の記者と同様に0%、不要な言葉である無色は5%と少なく他の記者よりも聞き取りやすかったと言えるが、背景の説明にやや時間がかかってしまったようだ。ちなみに昨年12月14日午前の会見を取り上げた前回記事ではモチヅキ記者は、他の記者の黄信号の割合に大差はなかった。  一方、菅長官の色別集計結果はこのようになった。 対朝日新聞オカムラ記者 青信号100% 対日本テレビワタナベ記者 赤信号13% 黄信号58% 青信号19% 無色10% 対毎日新聞タカハシ記者 赤信号82% 無色18% 対フジテレビチダ記者 赤信号30% 黄信号33% 青信号33% 無色4% 対東京新聞モチヅキ記者 青信号100%  まず、3名(ワタナベ記者、タカハシ記者、チダ記者)への回答に赤信号(論点のすり替え)がある。モチヅキ記者以外の質問には普通に答えているように見えた菅長官だが、改めて分析してみると実は答えていないことがある。  また、モチヅキ記者への回答が100%青信号なことが意外に思えるかもしれないが、回答はわずか5文字しかない。  では、これらがどのような回答だったのか、記者全員の全質疑の文字起こしで確かめていきたい。
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他記者質問でも見られる論点のすり替え
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