ジェンパクト株式会社代表取締役社長・田中淳一氏
田中:先ほど申し上げたプロセスマイニングツールもAIも含むデジタルテクノロジーのひとつと考えると、これはコンサルタントのジュニアの仕事を奪っているとも言えます。恐ろしいことにプロセスマイニングツールは、コンサルが現状業務の分析のために時間をかけて業務をヒアリングし可視化していたことを、非常に短い時間で一気にもれなく実施するので、その作業においてコンサルは不要になります。
ただし、それでコンサルが完全に不要になるかというとそうではありません。現状業務分析は単なる事前分析。本来必要なことはビジネス自体の戦略立案・実行や、それを実現する効率的で付加価値の高い新業務の設計・導入・定着化です。現状業務分析をやっていた時間を本来すべきコンサルとしても付加価値の一層の高い業務を提供することが求められていきます。
このように、一般的には付加価値の低い仕事はなくなりますが、付加価値の高い業務は更に増えます。‘18年の世界経済フォーラムでは、実に54%の人がこのデジタルテクノロジーによってリスキリング、つまりスキルの変更・追加が必要になると言われています。付加価値の低い仕事から高い仕事への変換です。ただし、日本は特に就労人口が減少していき、人手不足が深刻になりつつあります。デジタルによりリスキルをサポートするという流れが出てくると考えています。
山口:田中さんは、人間が取り組む仕事はどのように変わってくると捉えていますか。
田中:RPA/AIは、学習しないと実行できません。人間は柔軟に環境に適合していくことができるので、環境が変わったらその変わったことをRPA/AIに教えていく仕事や、RPA/AIで対応しきれない残りを含めた全体を統括・プロデュースする仕事、RPA/AIをどう使ってどう差別化をしていくかというビジネス戦略を考える仕事などはこれから増えていく仕事のひとつでしょう。
山口:それは、人間が行う業務がオペレーションな業務から、マネジメントする業務に変わるということでしょうか。対象が人かロボットかは別として、マネジメントすることを、マネジャー層だけでなく、若手メンバーも期待されるということでしょうか。
田中:機械にできない少し難しい意思決定をすることなどは、若手にはどんどん求められていくことでしょう。若手メンバーであっても、その部下にロボットが10人いる状況、と言ったらわかりやすいでしょうか。
その10人に対して指示したり、管理したりということはその若手メンバーがしないといけません。作業者に近いことをしていた人がマネジャー業務や企画業務をする機会が確実に増えます。逆に言うとそれができないと機械との競争する仕事になり、それだと人間は勝てません。