寒い家での凍死が急増!? これでいいのか、日本の住宅
日本の住宅の「断熱義務化」は見送りに?
岩崎真弓弁護士は「この義務化見送りの動きは、断熱をめぐる裁判にも悪影響を与えるのではないか」と懸念する。これまで、住宅の断熱性について施主と施工業者の間でトラブルになった裁判では、完成した住宅の断熱レベルが低かったとしても、裁判所はある一定のレベルの断熱をすることが「施工常識とは言えない」との立場を取ってきた。
また、断熱は建物のエネルギー効率や居住性能を高めるためのものという認識で、「断熱しないことが建物の基本的な安全性を損なう瑕疵である」とは認めないという判断をする事が多かった。断熱基準が義務化されれば、その流れが変わった可能性が高い。
「いまの裁判所は、断熱レベルが低くても快適性を左右する程度で、生命や健康に重大な影響を与えるとは認識していません。断熱基準の義務化により、その認識が変わると期待していました。義務化が見送られてしまえば大変残念ですが、今後も住宅を断熱することの重要性を法制度に取り入れられるよう働きかけていきたいと考えています」(岩崎弁護士)
住宅の劣悪な断熱性能によって、多くの人の命や健康が失われている現状を考えると、法制化は不可欠だ。しかし国や裁判所の態度はその点を認識しておらず、黙って待っていても暖かい家に誰もが住める社会には近づかない。一般の国民が、寒い家は自分たちの人権に関わる問題だという認識を深め、「まっとうな家に住みたい」という声を出していく必要があるのではないだろうか。
◆ガマンしない省エネ 第11回
<文/高橋真樹>
ノンフィクションライター、放送大学非常勤講師。環境・エネルギー問題など持続可能性をテーマに、国内外を精力的に取材。2017年より取材の過程で出会ったエコハウスに暮らし始める。自然エネルギーによるまちづくりを描いたドキュメンタリー映画『おだやかな革命』(渡辺智史監督・2018年公開)ではアドバイザーを務める。著書に『ご当地電力はじめました!』(岩波ジュニア新書)『ぼくの村は壁で囲まれた−パレスチナに生きる子どもたち』(現代書館)ほか多数。ノンフィクションライター、放送大学非常勤講師。環境・エネルギー問題など持続可能性をテーマに、国内外を精力的に取材。2017年より取材の過程で出会ったエコハウスに暮らし始める。自然エネルギーによるまちづくりを描いたドキュメンタリー映画『おだやかな革命』(渡辺智史監督・2018年公開)ではアドバイザーを務める。著書に『ご当地電力はじめました!』(岩波ジュニア新書)『ぼくの村は壁で囲まれた−パレスチナに生きる子どもたち』(現代書館)。昨年末にはハーバービジネスオンラインeブック選書第1弾として『「寒い住まい」が命を奪う~ヒートショック、高血圧を防ぐには~』を上梓
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