追悼。元編集部員が語る『噂の真相』岡留安則さんの死

最後まで美学を貫いた岡留さん

 当初の企画では2014年の休刊10周年という節目の出版だったために、企画の見直しを余儀なくされた。さらに、出版不況が加速し営業サイドからの見直しリクエストがあり、難航をきわめた。「とっておきの『噂の真相』後日談」などの原稿が送られてきても数ページずつという状況が続いていた2015年9月に送られてきたのが冒頭のメールだった。メールは次のように続く。 「基地と政治は流動的で、日々状況が変わるので、書下ろしは難しいので、別案を考えてみました。仮タイトルでいえば、『移住者が見た沖縄の真実』という感じでしょうか。沖縄移住10年以上の経験をもとに、沖縄の政治、基地、文化、音楽、風俗などを縦横無尽に語り、観光客には分からない沖縄の裏と表を語りつくそうという企画です。沖縄の人々の思いは生活の中にある。今までの沖縄本にはない面白い本ができそうです」  たしかに、岡留さんは沖縄でも政治的なオピニオンリーダーの一翼を担うようになっていったが、地域の事情もあって、政治的な混乱や対立に巻き込まれることもあったようだ。    このメールを受けて12月に「酒処 瓦屋別館」を再訪したがそのときは店内はガラガラ。かつてのにぎわいはどこへやらだった。打ち合わせを終えて、帰ろうとすると「噂の真相」時代の同じ思い出話を岡留さんが閉店の2時まで何度も何度も繰り返すのが異常といえば異常だった。  その直後、岡留さんは脳梗塞で入院したという連絡が入った。本人は最後まで検査を拒み、周囲の説得の末の入院だったという。闘病生活については、本人の美学から情報公開を最小限にされた。最後まで美学を貫いた生涯だった。  結局、企画した本は実現しないままに終わった。合掌。 <文/小石川シンイチ(元『噂の真相』編集者)>
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