自民党が日本国家の改革よりも55年体制の利権構造の温存を優先した結果の腐敗が頂点にある安倍政権で平成が終わる<平野貞夫氏>

新自由主義の始まりはバブル崩壊だった

―― 平成政治では新自由主義が猛威を振るいました。 平野:それは第三の「バブル崩壊の呪い」から来るものです。冷戦崩壊後、世界経済の中心は金融に移っていきました。日本ではバブル崩壊後、住専(住宅金融専門会社)を始めとする不良債権問題が起きました。  平成8年、橋本龍太郎内閣の時に自民党と新進党は、世界恐慌後に大改革をやった米国のペコラ委員会に倣って、日本版ペコラ委員会を作ることで合意しました。金融にシフトしている世界経済に対応するとともに、不良債権問題を法的に処理して戦後日本経済の負の遺産を清算するための財政・金融改革でした。ところが、住専に関する疑惑を抱えていた自民党の加藤紘一幹事長が、料亭の美人女将への不正融資疑惑で橋本総理を脅して、この構想を潰してしまったのです。  その結果、日本は自分の手で不良債権問題を処理できず、その代わりに米国のファンドが乗り込んできたのです。長銀がリップルウッドやゴールドマンサックスの食い物にされたのがいい例です。この財政・金融改革が潰されたせいで米国の金融資本に付け入る隙を与え、新自由主義が日本を食い荒らす道が開かれたということです。この時、日本版ペコラ委員会がバブル崩壊の処理をしっかりやっていれば、日本における新自由主義の弊害は避けられていたはずです。 ―― 日本は軍事的にも対米従属を深めていきます。 平野:それが第四の「対米従属の呪い」です。平成2年のクウェート侵攻、平成3年の湾岸戦争において、国連は国際秩序を守るために一定の役割を果たしたため、日本も国連主義を前提とする日本国憲法の理念に照らし、平成4年に宮澤内閣はPKO協力法を成立させました。  ところが、その後の自民党政権は国連を中心とする国際協調から、対米従属一辺倒になっていきました。平成15年、小泉純一郎政権は国連を無視した米国のイラク戦争を支持し、イラク特措法を成立させて自衛隊を派遣しました。さらに第二次安倍政権は平成28年に集団的自衛権の行使容認を閣議決定後、平和安全法制という名の戦争法制を強行採決し、米国の戦争に参戦できる体制を築きました。これらは憲法9条を破壊するクーデターで、内乱予備罪に当たります。
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政治腐敗・政治不信の行く末は、「地獄」
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月刊日本2019年2月号

特集1【冒頭解散を撃て】
特集2【トランプに捻じ曲げられた防衛大綱】
特集3【平成の光と影】
新春特別対談【世襲政治を打破する】
新春特別寄稿【女川原発を津波被害から救った男 平井弥之助に学ぶ】
新春特別レポート【子宮頸がんワクチン、日本撤退へ】