日韓「レーダー照射問題」、膠着状態を生み、問題解決を阻む誤情報やフェイクニュース
3) 自衛隊、防衛省の情報発信への信頼性が極めて低い
安保法制審議時における防衛省の大変な不誠実さ、日報改ざん・隠蔽事件、隊員虐待隠蔽、沖縄インチキ土砂(赤土)埋め立て工事など数え切れぬほどの不祥事により、自衛隊、防衛省の信頼性が著しく低下している。その結果、今回事態のような軍事的インシデントにおいても自衛隊、防衛省の報告にいちいち疑義が生じる。そして検証すると実際に不可解なことが大量に生じている。これは極めて憂慮すべきことで、文民統制の危機とも言える。
2018年12月28日公開の映像のほか、本稿で引用した文書ほかあらゆる防衛省発の情報が極めて品質が低い。
映像は、防衛機密保持のために編集していることはやむを得ないが、事態発生の座標というもっとも重要な情報を隠している。これは流石に機密とは言えない。更にテロップも明らかな誤りや稚拙な説明、情報のごまかしが多々あり、正視に耐えない。P-1から韓国艦船への呼びかけの邦訳も意訳ではなく超訳と言う他無い。
韓国国防部公開の反論映像は、含まれる情報こそ少ないが、プロパガンダ映像としては極めて優れている。そのうえ多言語版を供給している。結果、二国間のプロパガンダ合戦と考えても完全に敗北している。理由は簡単で、防衛省発の情報は、すべて国内向けエクスキューズであるため。
簡単に言ってしまえば、防衛省のプレスリリースからは、やる気の無さがひしひしと伝わってくるが、韓国国防部はやるき満々……ということだ。
6) 今回の日韓軍事インシデントは、韓国海軍の外洋海軍としての成長への両国の対応能力不足が原因と言える。
広開土大王が就役する前は、韓国海軍は第二次大戦型旧式駆逐艦とフリゲイト、コルベット、小型艦艇を要するのみの事実上の沿岸海軍であったが、広開土大王型、同型の失敗を教訓としたKDX-2、KDX-3配備と着実に外洋海軍化を進めている。海上自衛隊にとり、かつては韓国海軍の存在は平素忘れられる程度のものであったが、現在では平時の作戦行動海域が日本側作戦行動海域と重なってきている。韓国海軍は、質・量ともに有力となってきている。
今回のインシデントは、日韓両国海軍(海上自衛隊と韓国海軍)における調整組織を常設することの必要性を示すものと言える。これは対等な友好国だからこそ必須と言える。
日韓SAR協定も締結当時には、韓国艦船が日本に近い公海でSAR活動を行うことを想定していたのか疑わしい。
ほかにも教訓は多数存在しますが、挙げればキリがないため、今回は重要と思われる以上6項目にとどめます。
4) 首相官邸の独走によって情報漏えい、無意味な二国関係悪化が生じている
今回事態の外交問題化は、日韓両国にとって何ら得るところがない。特に日本にとってはP-1の機密漏洩の危機を自ら招くだけでなく、安保法制審議時にTV生放送にて首相自ら”生肉の模型”(※)まで持ち出して主張した半島有事における在外邦人救出において日韓連携を不可能にするものである。
昨年年始には一触即発とまで喧伝された半島情勢だが、安保法制(周辺事態法)では、自衛隊による邦人救出が理由の一つとして提示された(合衆国軍による救出も宣伝されたが、それはありえない嘘である)。かつてのシベリア出兵のような侵略行為(大日本帝国による出兵は規模過大、期間も著しく長く、侵略行為と批判を浴び、派遣軍は疲弊し大失敗に終わった)を行わない限り、日韓共同の作戦を実施せねばならない。なぜなら、作戦域は韓国領土内である。邦人救出作戦は、日韓両軍の極めて広範囲かつ複雑で密接な連携を必須とする。
今回事態は、日韓両国、両軍の関係を一方的にぶち壊しにしており、安保法制審議における安倍晋三氏による生肉演説は空手形=虚構であったということになる。
5) 12月28日公開の映像を含め、防衛省から発信される文書等が、組織防衛のための伏線を除き極めて品質が低い
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