虎ノ門と六本木の間に「日本一の超高層ビル」誕生へ。次のヒルズは「麻布台」に!?

変わる街並み。「旧郵政省本庁舎」も解体へ

 さて、歴史好きにとって「麻布台」といえば、周辺で縄文時代や弥生時代の遺跡が発掘されたことや、江戸時代には上杉家をはじめとした大名や旗本らの屋敷が多くあったことでも知られる。  そして、現在上杉家の大名屋敷跡に建つ「日本郵政グループ飯倉ビル」(旧逓信省貯金局・郵政省本庁舎)も「歴史的建造物」として歴史好き、近代建築ファンには広く知られていたが、この建物も再開発により解体されることとなる。
日本郵政グループ飯倉ビル

旧・郵政省本庁舎として知られる歴史的建造物「日本郵政グループ飯倉ビル」。右奥には東京タワーの姿が

 日本郵政グループ飯倉ビルは1930年に「逓信省貯金局」として竣工。設計は大蔵省営繕管財局。省庁再編で1943年に運輸逓信省逓信院本庁舎に、1946年に逓信省本庁舎に、そして1949年に郵政省本庁舎となった。また、1945年には東京大空襲で焼失した麻布郵便局も入居している。その後、郵政省本庁舎としては1969年まで使われた。  建物を上から眺めると日本銀行と同様に建物が「円」の字に見えるのは偶然か意図的か(「円」は戦後に正式に使われるようになった略字であるが、当ビルが建設された昭和初期にも略字として用いられることが多かった)。最上階の列柱やエントランスの柱には装飾がなされ、外壁に黄土色のスクラッチタイルが並ぶ姿は、派手さはないが「モダニズム建築のお手本」の1つともいうべきデザインだ。  麻布台エリアでは1990年代にも再開発計画が持ち上がったものの、バブル崩壊後の景気の後退により計画は進まなかった。飯倉ビルの建物は歴史的建造物として綺麗に保たれており、再開発計画の頓挫もあってか一部では補強・補修工事も行われているようであったが、景気の底上げとともにふたたび再開発が検討されるようになり、2018年3月に日本郵政と森ビルにより「虎ノ門・麻布台地区第一種市街地再開発組合」が設立されるに至ったという。  2018年現在、板倉ビル内には日本郵便東京支社、麻布郵便局などが入居していたが、メインテナントであった麻布郵便局は2018年11月19日に移転。今年中にビルは閉館される見込みだ。再開発エリアの訪問時に飯倉ビルを撮影していた男性は取材に対して「せっかくこれだけの建物が残っているのに残念ですね」と淋しげに答えた。  余談であるが、飯倉ビルの向かいには「ロシア大使館」がある。場合によっては多くの警備員や警察官が配置されている日もあるため、惜別訪問・撮影の際には大使館に迷惑をかけないように心がけたい。また、同ビルに隣接する外務省飯倉公館・外交史料館、そして麻布小学校は再開発区域には含まれておらず、再開発後も変わらぬ姿を見せてくれることになる。
旧郵政省本庁舎

整然と並ぶスクラッチタイルが美しい。この姿を見られるのもあと僅かだ。すぐ奥に見える超高層ビルは先述した「アークヒルズ仙石山森タワー」

 六本木ヒルズ、東京ミッドタウン、虎ノ門ヒルズ、麻布十番、そして東京タワー、芝公園……と、有名な街・観光地が徒歩圏にありながら、これまでは「用事が無いと訪問しない街」であった麻布台。 僅か4年後には、「麻布台ヒルズ(仮称)」が新たな都心のランドマークとして、そして緑豊かな憩いの場として、多くの人々で賑わう街へと大きく姿を変えているかも知れない。 <取材・文・撮影/若杉優貴(都市商業研究所)> 都市商業研究所 若手研究者で作る「商業」と「まちづくり」の研究団体。Webサイト「都商研ニュース」では、研究員の独自取材や各社のプレスリリースなどを基に、商業とまちづくりに興味がある人に対して「都市」と「商業」の動きを分かりやすく解説している。Twitterアカウントは「@toshouken
若手研究者で作る「商業」と「まちづくり」の研究団体『都市商業研究所』。Webサイト「都商研ニュース」では、研究員の独自取材や各社のプレスリリースなどを基に、商業とまちづくりに興味がある人に対して「都市」と「商業」の動きを分かりやすく解説している。Twitterアカウントは「@toshouken
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