鉄道の手荷物検査強化。利便性とコストを踏まえた着地点を考える

鉄道事故よりも車内に広がる危機意識

 ただ、最初にも述べたように一切の不審物・危険物の持込を防ぎうる空港の保安検査のようなものは現実的にありえない。鉄道車内での“個人の凶行”、さらには組織的なテロはどうすれば防ぐことができるのだろう? 「監視カメラを複数のネットワークでつなぎ、不審者を検知・追跡するシステムの導入が考えられます。が、コスト面や技術面、さらにはプライバシーの侵害という課題もあってすぐに導入することは難しい。比較的簡単にできることは、形だけの警備員巡回ではなく、随時乗客の手荷物検査を行うこと。法制度などの壁をクリアする必要はありますが、鉄道の車内において手荷物検査・身体検査を求められたら拒否できないようにすればいい。新幹線だけでなく通勤路線などにも随時警備員や警察官が乗り込んで目を光らせる。もちろん、これも“監視社会”につながるわけで反発はあるでしょう。しかし、鉄道の車内という密室のなかでの凶行を防ぐという点で効果はあると思いますよ」  ひとたび新幹線に乗って新横浜を出てしまえば、名古屋まで1時間以上停まらない。そのなかでの“凶行”は個人であろうが組織的テロであろうが、ひとりひとりの乗客が対処できるレベルではないだろう。  “鉄道の安全”というと鉄道事故を想起させるが、今や車内にも危機がある。国交省が検討している手荷物検査が効果的なものなのか。はたまたより効果的な対策があるのか。今後の動向に注目したい。 <取材・文/HBO編集部>
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