反共主義から国家社会主義まで。独自の進化を遂げる東欧ブラックメタル

神道をテーマにしたラトビアのバンドも

 一括りに東欧と言っても、こうした各国の特色がブラックメタルバンドにも表れている。

旧共産圏の風情が感じられるベラルーシのケンタッキー・フライド・チキン

「ウクライナは現在進行形でロシアとの問題を抱えていることもあり、反共主義を唱えるRAC(ロック・アゲインスト・コミュニズム)バンドが活動的な印象。もともと昔から、愛国心が強めのバンドが多いですね。ベラルーシでもウクライナ同様、ペイガン・フォーク系のバンドも多い。また、親ロのイメージが強いものの、ベラルーシ語で歌う反共主義バンドもいます」  過去の歴史だけでなく、最新の政情が反映されている点もブラックメタルの面白いところだ。隣り合っているバルト三国でも音楽性は異なる。 「リトアニアはとても有名というバンドはいないものの、マイナーながらも味のある土着宗教に重きを置いたペイガン・フォーク系が多い。ラトビアにはなぜか日本の神道をテーマにしたYomiという面白バンドがいます(笑)。エストニアではMetsatöllという、エストニア語で歌うフォークバンドが自国のメタルシーンを牽引しています」  続いて東バルカンの特徴も聞いてみた。 「ルーマニアはブラック色の薄いバンドも含めフォークメタルが非常に盛んです。ブルガリアではNS(国家社会主義)色の強いバンドが散見されますね。モルドバはバンド数自体がかなり少ないですが、穏やかなモルドバの丘陵地帯を思わせるアンビエント・ブラックBasarabian Hillsが有名です」  いっぽう、旧ユーゴスラビア圏の西バルカンのブラックメタルシーンは、やや小粒なんだとか。 「西バルカンは世界的に有名なバンドが非常に少ないです。パッとしないシーンではありますが、プリミティブ・ブラックメタル系など、意外とあなどれないバンドもいる。しかし、どちらかというと、パンクシーンのほうが盛り上がっているイメージです。どうしても東バルカンのメタルシーンのほうが成熟しているように思えます」  こうした各地の微妙な違いを聴き比べてみるのもいいだろう。 <取材・文/林 泰人>
ライター・編集者。日本人の父、ポーランド人の母を持つ。日本語、英語、ポーランド語のトライリンガルで西武ライオンズファン
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