中国での身柄拘束、スパイ容疑とそれ以外では扱いに雲泥の差

日本人拘束が減っている背景

 その中国で2018年新たにスパイ容疑で拘束された日本人は0人だった。一体どうしてなのか。日本政府関係筋によれば、2018年が日中平和友好条約締結40周年だったことで春先から多くのイベントがあり、日中両国の要人が往来していたことと、春先から深刻になり泥沼化している米中貿易戦争が影響しているという。  中国としては日本との不要な摩擦を避け少しでも中国の味方にしておきたいという思惑が関係している。  その現れの1つが昨年7月に相次いで判決が出された日本人スパイ罪の判決だ。中級人民法院(地裁に相当)で男性2人へ5年と12年の実刑が言い渡されている。12月8日には上海で日本人女性へ5年の実刑が言い渡された。  2014年11月1日に施行された「反スパイ防止法」の最高刑は死刑で、施行当時、中国人弁護士へ法解釈を確認すると軽くても懲役20年以上や終身刑と考えられるとの見解を示していた。  それを踏まえて考えると、相当軽い量刑が下されたと言える。中国はそのときの内政状況によって中央政府の裁量で量刑やスパイの定義すらもいくらでも変更できるということだろう。  スパイ容疑で拘束が続くカナダ人2人の速報はあまり入ってこないが、中国政府に優遇されていたと言われいていたNGO団体代表で実業家のマイケル・スパバ氏は、2017年1月1日から施行された 「NGO国内活動管理法」を半ば力技で適応させてスパイ容疑で拘束したと考えられる。  現時点、日本人にとって2016、17年ほどの中国での拘束リスクはなくなっている。そのわけは、上記のような中国の事情に加え、ファーウェイ問題でロックオンしたターゲットが一時的に日本人からカナダ人へ移行しているだけだ。もし、ファーウェイ問題や米中貿易戦争に何かしらの落とし所が見つかり解消し、さらには2019年5月1日の新天皇即位後とされる習近平国家主席の来日が無事に終わった後には再びターゲットが日本人となり日本人がスパイ容疑で再び拘束される事案が発生することは十分に予想できる。 <取材・文・撮影/我妻伊都(Twitter ID:@Ito_Wagatsuma)>
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