透流 / PIXTA(ピクスタ)
パチンコ業界の今年の「流行語」を選ぶのであれば、「依存問題」と答える業界人は多いだろう。その点に関しては、当サイト上においてあらゆる記事を提供してきた筆者にも依存……いや異存はない。しかし今年のパチンコ業界では、「依存問題」とは別に、世間にはあまり知られていない、もう一つのトレンドワードがある。それは――
「減収増益」
前年決算と比較し、売上は下がったが利益は増えたという状態。全国の主要なパチンコ企業の多くは、今、この「減収増益」の状態にある。この裏流行語から見えてくる、パチンコ業界の現状とは何なのか?
11月28日、業界最大手のマルハンが公表した、平成31年3月期中間決算(速報値)によれば、半年間の売上は7805億9800万円(前年比約2.4%減)、経常利益は228億3500万円(同23.5%増)となっている。絵に描いたような「減収増益」だ。
一方、業界2番手で、香港の株式市場に上場しているダイナムジャパンホールディングスが、11月21日に発表した中間決算でも、売上(貸玉収入)は3868億円(前年比2.6%減)、経常利益124億円(同47.6%増)となっており、更にわかりやすい「減収増益」となっている。
大手2社だけではない。HP等で決算情報を公開している他のパチンコホール企業を見ても、ほぼ「減収増益」となっているのだ。
一般論から言えば、今の日本の経済状況において「減収増益」は決して珍しいものではない。
長らく続くデフレ環境によって売上は減少したが、人件費の削減を含む大幅なコストカット等の企業努力により利益を増やしたという意味である、それは十分に理解出来る。
しかしパチンコ業界の場合、「減収増益」というワードが世間に与えるイメージは上記のそれとは大きく異なる。
もちろん、パチンコ業界も多分に漏れず、消費電力の削減や、人員の効率化、広告宣伝のスリム化等、様々なコストカットを行っているが、結局は「遊技客からお金を巻き上げている」という風に曲解されてしまうのだ。
まして、遊技客の減少に歯止めは掛からず、倒産件数は増えて店舗数は年々減り続け、斜陽産業とまで呼ばれている業界である。今のうちに稼げるだけ稼いでしまおう。そう思われるのも、ある側面では仕方ないのかも知れない。
しかし実は、この「減収増益」という言葉を分解していくと、2018年のパチンコ業界の実情が見えてくる。
パチンコ店における最大のコストとはなんなのか。一般的にパチンコ店における大きな経費として挙げられるものには、人件費、地代家賃、水道光熱費、広告宣伝費があるが、なんと言っても最大のコストは、遊技機の購入費である。
パチンコやパチスロの遊技機の価格は、新台でおおよそ40万円~50万円する。更に中古機市場に出回っている人気台になれば、100万円をゆうに超える遊技機もざらにある。ものによっては、200万円をも上回る。
繁盛店では、1年間に店舗設置台数と同等の台数を購入することもあり、一般的なパチンコ店でも、設置台数の5割程度は入れ替えるのが通例だ。
これらの遊技機の購入費こそが、パチンコ店における最大のコストである。
裏を返せば、パチンコ業界の「減収増益」の理由は、まさにここにある。
今、パチンコ店は、この遊技機をまったくと言っていいほど買っていないのだ。