海外でのコミュニケーションがスムーズになる、「万国共通のしぐさ」とは?

話に入り込む適切なタイミングは、「止まれ」のしぐさを観ればわかる

 さて、この5つのエンブレムの中でも特にコミュニケーションの中で活用をおススメしたいのは、③の「止まれ」です。  会話しているシーンを想像して下さい。あなたの話相手が今、話しながら片手の手のひらをやや下前方に向けています。これは「今、私が話し手です。」「私は話している最中ですので話しかけないで下さい。」「私は今話していることをあなたに強く伝えたいのです。」こんな意味です。  したがいまして、このエンブレムを観たら、そしてあなたがよい聞き手でありたいと思い、相手の話の内容を余すことなく最後まで聞きたいと思うならば、途中で口を挟まない方がよいのです。不明瞭なことがあっても質問しないのです。頷きながら相手に沢山話してもらうことを促し、質問や意見などは、「止まれ」の手が下がって一呼吸おいた後がよいのです。  ところで、フルの「止まれ」のしぐさは、片手あるいは両手の手のひらを外側に向け、腕を前方に挙げる動作です。これが明確に出るときは、何かが不意に目の前に迫ってきたときのように緊急事態で咄嗟に生じる場合か、「それはダメ、いけません、止めなさい。」と教育的な立場からシグナルを発するときくらいです。  なお本論で紹介しているケースは微動作です。微動作とは、抑制された感情や意図が断片的な身体動作として現れる現象のことでした。  話し手が、明確に「止まれ」のしぐさを行ったとしたら、平等なコミュニケーションのやり取り、すなわち会話のキャッチボールは成立しません。こうしたことを話し手は無意識に感じているものの、自分がどうしても話続けたいときに「止まれ」が微動作として現れるのではないかと、私は思います。  是非、今度の会議や商談で、この「止まれ」のしぐさを観察し、良い聞き手になってみて下さい。話相手に「この人、何だか話しやすいな~」ときっと思ってもらえることでしょう。  次回は、しぐさ、特に微動作からウソや相手の真の想いを察する方法について紹介したいと思います。 <参考文献> Matsumoto, D., Mark G., F., & Hyi S, H. (Eds). (2013). Nonverbal Communication : Science and Applications. 【清水建二】 株式会社空気を読むを科学する研究所代表取締役・防衛省講師。1982年、東京生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業後、東京大学大学院でメディア論やコミュニケーション論を学ぶ。学際情報学修士。日本国内にいる数少ない認定FACS(Facial Action Coding System:顔面動作符号化システム)コーダーの一人。微表情読解に関する各種資格も保持している。20歳のときに巻き込まれた狂言誘拐事件をきっかけにウソや人の心の中に関心を持つ。現在、公官庁や企業で研修やコンサルタント活動を精力的に行っている。また、ニュースやバラエティー番組で政治家や芸能人の心理分析をしたり、刑事ドラマ(「科捜研の女 シーズン16」)の監修をしたりと、メディア出演の実績も多数ある。著書に『ビジネスに効く 表情のつくり方』(イースト・プレス)、『「顔」と「しぐさ」で相手を見抜く』(フォレスト出版)、『0.2秒のホンネ 微表情を見抜く技術』(飛鳥新社)がある。
株式会社空気を読むを科学する研究所代表取締役・防衛省講師。1982年、東京生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業後、東京大学大学院でメディア論やコミュニケーション論を学ぶ。学際情報学修士。日本国内にいる数少ない認定FACS(Facial Action Coding System:顔面動作符号化システム)コーダーの一人。微表情読解に関する各種資格も保持している。20歳のときに巻き込まれた狂言誘拐事件をきっかけにウソや人の心の中に関心を持つ。現在、公官庁や企業で研修やコンサルタント活動を精力的に行っている。また、ニュースやバラエティー番組で政治家や芸能人の心理分析をしたり、刑事ドラマ(「科捜研の女 シーズン16・19」)の監修をしたりと、メディア出演の実績も多数ある。著書に『ビジネスに効く 表情のつくり方』(イースト・プレス)、『「顔」と「しぐさ」で相手を見抜く』(フォレスト出版)、『0.2秒のホンネ 微表情を見抜く技術』(飛鳥新社)がある。
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