「Huawei副会長逮捕は世界に混乱をもたらすだけ」コロンビア紙が批判

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 中国の大手通信機器の企業ファーウェイ(Huawei)の副会長(CFO)孟晩舟(Meng Wanzhou)がメキシコに向かう途中、カナダ・バンクーバー空港において米国からの要請で関係当局によって逮捕された出来事は瞬く間に世界のニュースとなった。その3日後に保釈金1000万カナダドル(8億5000万円)を払いカナダに滞留することとなった。  逮捕された容疑は米国の制裁対象国であるイランと金融取引に関与したというのが理由である。(参照:「El Tiempo」)  孟副会長の夫である劉曉棕(Liu Xiaozong)は、彼女が米国に送還されるのを回避させるべく弁護料1100万ドル(12億1000万円)を払っているという。(参照:「Publico」)

「世界を混乱に導く」

 今回の孟の拘束を決定した米国トランプ政権は、通信機器の分野において世界の覇権を握る方向にある中国に対して、米国の支配は今後も続くということを誇示しようとしているような行為であるが、それは正に「世界を混乱に導こうとしている」と指摘しているのは、創刊107年の南米コロンビア紙『EL TIEMPO』(12月15日付け電子版)である。  更に同紙は、<香港からカナダ経由でメキシコに向かおうとしていた彼女を米国に送還させるべくカナダ当局に逮捕を要請するというやり方は中国企業に対して米国が宣戦を布告したようなものだ。そのような前例は殆どない。外国に向かう米国の企業家を似たような理由でもって危険にさらすようなものだ>と述べている。即ち、米国の企業家が同じような容疑と手段で外国で逮捕される可能性があるという前例をつくったということなのである。(参照:「El Tiempo」)  また、米国の制裁下にあるイランに対して、米国の企業がイランや他の制裁下の国々と取引した例は多数あるとも同紙は指摘している。  2011年のJ.C.モルガン・チェースは米国政府がキューバ、イラン、スーダンに科していた制裁を無視してこの3か国と取引して、同行は8830万ドル(97億1300万円)の罰金を支払ったが、同行CEOジェームズ・ダイモンの身柄の拘束で飛行機から降ろされるということはなかった。他にも同じような例があるとして、同紙は2010年から25の銀行を列記している。その中には東京三菱銀行もリストアップされている。  しかし、これらの件における全ての銀行の役員は誰も逮捕されていない。どの場合も、企業としての責任はあるが、役員個人への責任はないからだ。  更にトランプ政権の今回の行為が国際的に問題があると続けている。というのも、2015年に国連でイランの核問題に関する国連安全保障理事会の決議案2231号で制裁措置の履行の解除が決定しているのだ。それをトランプ政権は無視して、しかも米国内ではなく、自国の領土以外で米国の制裁を適用させようとする行為は軽率で独断的だと同紙は意見している。
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5G覇権争いを巡る米国の焦り
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