増税による景気後退で「下流2.0」時代到来の可能性

賃金がほぼ横ばいのなかで国民負担だけが増加

『下流予備軍』の著者で会計士の森井じゅん氏は、「近い将来、一億総下流化の危険性があります」と指摘する。 「“取りやすいところから取る”という印象の強い税制などへの変更が予定されています。介護費や医療費が増え、要介護者やそれをサポートする家族への負担が増大。さらに消費増税をはじめ、出国税などの新たな税負担も始まります。’20年には給与取得控除も改正され、基本的に850万円超えのサラリーマン世帯は増税に。この給与取得控除は年々縮小傾向にあるため、もっと低い年収の人はより苦しくなるでしょう」
男性の所定内給与額の推移

《男性の所定内給与額の推移》所定内給与額とは基本給のことであり、残業代は含まれない。ほぼ平坦で上がっていない 厚生労働省・毎月労働統計調査より

「男性の所定内給与額の推移」からも、国民の給料が上がってない中で負担が増えれば、中流が下流に落ちてしまうケースは容易に想像できる。  また、社会学者の山田昌弘氏は、お金だけではなく、“仕事”を奪われる未来を予想する。 「人工知能“AI”による機械の発達が、ホワイトカラーの専門的な仕事を単純労働に、そして低賃金化する流れにある。また、移民受け入れ拡大で、優秀な外国人労働者が増える。欧米では上昇意欲の高い2世、3世に仕事を奪われるケースも増えています。お金の面でも仕事面でも、いつ誰が下流に陥るかわからない、不安が常につきまとう時代がやってきます」  その下流の“ゆがみ”は、すでに国内で表れはじめている。 【中原圭介氏】 もっとも予測が当たることで定評がある経済アナリスト。近著に『AI×人口減少 これから日本で何が起こるのか』(東洋経済新報社) 【森井じゅん氏】 公認会計士・税理士。お金にまつわる国家資格を多数取得し、税務申告や企業コンサルも務める。’17年に初の著書『下流予備軍』(イースト新書)を出版 【山田昌弘氏】 社会学者。専門は家族社会学。「パラサイトシングル」「婚活」の新語を考案。最新刊に『底辺への競争 格差放置社会ニッポンの末路』(朝日新書) ― 新型[下流社会]の衝撃 ―
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