美容整形を取り巻く現状
そして、男性の利用客が増加しているのも大きな変化だ。世界的に見ても、男性の美容医療利用者は拡大傾向にある。先出の「IMCAS」によれば、現在、美容整形手術を受ける人の中で男性の割合は約10%程度。だが、今後は男性比率が増加するとの見方が強い。世界一の美容整形大国であるアメリカだけをみても、米国美容整形外科学会(ASAPS)の発表によると’97年から’15年まで男性の美容整形は325%上昇しており、今後もその傾向は続くとしている。
男性が特に好む施術内容は、頭髪の延命、植毛手術のほか、レーザーを使った肌の引き締め、注射によるしわ取り、ケミカルピーリング、脂肪冷凍による痩身手術といった、低侵襲の処置。これらは、メスを入れる外科手術よりも心理的なハードルが低いと高氏はいう。
「ちょっとした脱毛やしみ治療、ボトックス注射まで、気軽に受けられる土壌は整ってきた。それもあり、業界全体のイメージがライトになってきており、利用者の幅も広がっている。そういった意味では、湘南美容外科クリニックさんのように安価な価格設定、高須クリニックの高須院長のような一般にも広く知られる方の存在は大きいのかもしれません」
また、市場の停滞を招いている原因はもう一つあるという。
「もともと、美容医療の世界は利益率が非常に高い。一概にはいえませんが、利益率で見れば30~40%の水準でしょう。湘南美容外科の価格帯でも、充分な利益が出ています。ただ、経営者達は薄利多売になることを恐れて、価格やサービスに対する工夫があまり見られない。それが国内の市場の停滞にも繋がっています」
転換期を迎えた美容医療業界は、今後どうなっていくのだろうか。
「技術や方法論は年々進歩しても、機材や薬剤自体は10年ほど前から大きく変わっていない。つまり、価格に反映されるのは外科医の技術と院毎の塩梅であって、ハード面ではない。だから、まずは経営努力で価格帯を下げる院がある程度出て来ること。加えて、より合理性を突き詰めるべきでしょう。アフターケアなど、まだまだ改善できる余地が残る分野もあるはずです。繰り返しになりますが、今の国内の美容医療は暴利ですし、院の絶対数も多すぎますよ」
今後の業界の推移は、価格帯により左右されることは間違いなさそうだ。ただ、私達にとって、美容医療は身近になりつつある。この状況にはビジネスのヒントにつながる芽があるかもしれない。
高尚威氏
【高尚威氏】
中国出身、7歳で来日。奈良県立医科大学卒業。タカナシクリニック、きぬがさクリニック、湘南美容外科を経て’17年東京美容医療クリニックを開業
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