副業従事者の数(ランサーズ株式会社調べ)
「ホワイトカラーのビジネスフリーランスで、法人登記をしている人もいれば、個人事業主もいます」
しかし現状では企業側も労働者側も、プロジェクトごとの雇用という考え方になじみがない。
「定番ですが、一般的な副業といえばアンケートモニターや仮想通貨、不動産投資、古本から高額な稀少本を探して売る“せどり”、服の販売やアフィリエイトブログなどですね。日本ではビジネススキルを活かすのではなく、軽く始められるものが副業なんです」
だが、日本にはまだ複数社で働くという価値観がないため、副業=簡単にできる小遣い稼ぎになってしまうのが現状だ。自分の強みは何で、どのように市場とマッチングさせるかがわからないのだ。
「自分が何をしたいか? 何ができるか?ということ。たとえば『営業部長』は役職であって、自分ができることの説明にはなっていない。それを、職能やスキルに落とし込んで考える必要があります。具体的には、今の職種の経験を活かすというのがわかりやすいですね。私が経理なら、知り合いの会社の管理表づくりにアドバイザーとして入るとか、広報なら他社のプレスリリースを月に一本請け負うとか、小さな経営課題を解決するなどを考えます」
ただし他社の業務を請け負う場合、本業に支障が出たり、副業だからと価格設定を低くしたために大量に仕事が来てしまうなどの問題もある。本業ではできない自己実現を副業で実現するというのも、副業の選び方だ。
「カレー屋をやりたいから、他人の店の空いている時間を借りてやってみる、自分の好きなものを世の中に勧めるために自分のECサイトを持つなど。プラモデルの製作代行のような仕事もあります」
副業をキャリアアップの手段として捉えることもできる。
「たとえば人事で採用と研修までは自分の会社で任されているけれど、労務の経験はない。労務系の案件であれば、小さな会社の仕事でもやってみて経験を積むという副業もある」
ただ、副業を始める前に、収入か自己実現、キャリアアップなのかなど目的を定める必要がある。また、どのくらいの時間を充てることができるのかも重要だ。
そして、当然ながら会社の服務規程の確認は必須。
「会社の副業規定に、競合企業での副業禁止やミッションの内容を事前に報告する義務が課せられている場合もあります」
企業側からすれば、優秀な外部の人材を自社のプロジェクトにどのように取り入れるかが今後の課題だろう。働き方改革は働き口を増やすだけでなく、自分自身の職歴や人材価値を見直す作業でもあるのだ。
【信澤みなみ氏】
早稲田大学人間科学部卒業。株式会社サーキュレーション・女性活躍推進プロジェクト代表。パラレルキャリアアドバイザー、同社新卒採用マネージャー
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