「うめきた再開発」計画はその話題性から大阪市民の誰もが知るほどのビッグプロジェクトであるが、延伸予定線のもう一方のターミナル・十三駅といえば、阪急電鉄にとって京都線・神戸線・宝塚線3路線のほぼ全列車が停車する主要駅であるにも関わらず、駅前はどこかホっとするような、古くからの庶民的な街並みが広がる。2014年には36軒が全焼する火災が発生したものの、現在は見事に復興を遂げており、今も「元気な商店街」として知られる。
十三駅前の商店街。庶民的な物販店と居酒屋、大阪グルメの店などが立ち並ぶ
近い将来「なにわ筋連絡線」と「新大阪連絡線」が開通すれば、十三駅は5路線が、そして仮に計画中の「伊丹空港連絡線」「西梅田・十三連絡線」が開通すれば7路線が集まる巨大ターミナルへと成長、そして関空までは40分台、新大阪駅までは僅か数分でアクセスできることになる。
現在の十三は仕事帰りに「ちょい飲み」する人たちで賑わいを見せる地元客中心の街であるが、近年は観光客の姿も増えつつある。狭い路地が入り組んだ街並みは火災などの防災面にも不安があることもあり、こちらも阪急各線の整備後は「京阪神・宝塚に加えて空港、新幹線にも1本で行ける街」として大型再開発が実施される可能性が高い。
今年、阪急電鉄は十三駅に隣接する武田薬品工業の工場敷地の一部(約6ヘクタール)を買収する方針を発表した。これは阪急による「新線建設」と「駅周辺再開発」への意気込みと取れる。個人的には、十三の街並みはこのまま残しつつ、新たな「大阪の玄関口」として新幹線利用客が「乗車前のちょい飲み」を楽しむ観光地の1つとなって欲しいのだが…街に「変化」が訪れる日も近いのかも知れない。
赤提灯が灯る十三駅前。地元客に親しまれる街だ
大阪の鉄道の歴史が始まったのは、新橋-横浜間に鉄道が開通した僅か2年後の1874年、大阪-神戸間が開通したことによるものだった。その後、大阪の鉄道網は、日本初の公営鉄道(大阪市電)を生み出した自治体の先進性や、国営鉄道(のちの省線→国鉄)と私鉄・公営鉄道との激しい競争により大きく発展を遂げ、国鉄と私鉄の役割分担が比較的明確であった東京とは「一味違う」鉄道網が構築されていった。
大阪の中央部を貫く大阪メトロ御堂筋線(心斎橋駅)。「高い天井」に「シャンデリア」が並ぶ光景を見ると「大阪に来た!」という気分にさせられるが、基本設計は戦前というから驚きだ。この駅にも改装計画があるが、果たしてどうなるであろうか。
大阪万博の開催を機に更なる成長を遂げようとしている関西の鉄道網とその沿線。
約20年後のリニア中央新幹線の開通時には、一体どういった姿を見せてくれるのであろうか。
<取材・文/若杉優貴 撮影・図/淡川雄太 ウラカシ(都市商業研究所)>
【都市商業研究所】
若手研究者で作る「商業」と「まちづくり」の研究団体。Webサイト「都商研ニュース」では、研究員の独自取材や各社のプレスリリースなどを基に、商業とまちづくりに興味がある人に対して「都市」と「商業」の動きを分かりやすく解説している。Twitterアカウントは「
@toshouken」
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