介護業界の人手不足を、移民で補うのは“愚策”。枝野幸男氏と藻谷浩介氏が批判

非正規雇用問題と人材不足の解消は着実に進めるべき

枝野講演

枝野幸男・立憲民主党代表

 続いて枝野代表は、非正規雇用問題についての対策も挙げていった。 枝野:就職氷河期のロストジェネレーションの人達は今も正規の仕事につけなくて、なおかつオン・ザ・ジョブ・トレーニングによるスキルアップができなくて、非常に苦しんでいる人はたくさんいます。これに即効策はなかなかない。  この人たちをいかに正規社員にして、人手不足のところに移っていただくのか。人付き合いが苦手な人が、ずっと20歳すぎからやってきた仕事を止めて、いきなり介護の仕事をやるのは無理です。職業の再訓練をしながらシフトしていただき、そして正規の仕事につなげていく。派手に打ち上げて一気に進んでいく話ではないので、地味だけど着実に進めていかないといけないと思っています。

無視された“島根県モデル”

藻谷会見

藻谷浩介氏は、改正入管法を「愚作」と指摘したうえで“島根県モデル”を提唱した

「安倍首相に最も嫌われているエコノミスト」と呼ばれた藻谷氏も「入管法改正の愚策 人手確保は少子化対策で」と銘打った12月2日付の『毎日新聞』で、「入管法改正には百害あって十利程度しかない」と酷評した上で、島根県をモデルにした代替案を次のような流れで紹介していた。 1)2015~2020年に就業者数が120万人減少する予測のため、改正入管法審議における政府予測の「今後5年間で35万人増加」では到底足りない。しかも低賃金の外国人労働者が急増した地方自治体は、日本語を話さない子供の教育や医療など制度からこぼれ落ちた問題への対処に疲弊する(桁違いに低い効果の割に弊害が多い)。 2)過疎地の代表・島根県では共働き家庭の子育て支援が充実し、25~39歳の女性就業率は47都道府県で1位、合計特殊出生率は2位。仮に日本全国で、学校を卒業し終わっている25歳以上の女性の就業率が島根県と同水準にならば、日本の就業者数は20年時点でも15年の実績より371万人も多くなる。  島根県をお手本にすれば、改正入管法の見通しである「今後5年間で35万人」の10倍以上の効果があることを示した上で、藻谷氏はこう結論づけていた。 「膨大な社会的コストを払って外国人労働者を増やすよりも、同世代の男性に比べて低い率でしか働いていない若い女性の活躍の場を広げる方が、はるかに効果的・効率的なのだ」  改正入管法成立の、憂うべき決定過程が明らかになってくる。それは、「思考能力に乏しい最高権力者が、現状分析をきちんとしない側近の言うがままに、弊害の割に効果が乏しい愚策をゴリ押した結果、人手不足解消に有効な処方箋(島根県モデル)が見向きもされなかった」というものだ。「亡国の首相と官房長官」と呼ばれても仕方がないだろう。 <取材・文・撮影/横田一> ジャーナリスト。小泉純一郎元首相の「原発ゼロ」に関する発言をまとめた『黙って寝てはいられない』(小泉純一郎/談、吉原毅/編)に編集協力。その他『検証・小池都政』(緑風出版)など著書多数
ジャーナリスト。8月7日に新刊『仮面 虚飾の女帝・小池百合子』(扶桑社)を刊行。他に、小泉純一郎元首相の「原発ゼロ」に関する発言をまとめた『黙って寝てはいられない』(小泉純一郎/談、吉原毅/編)の編集協力、『検証・小池都政』(緑風出版)など著書多数
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