終わりなきカルト2世問題の連鎖<短期集中連載・幸福の科学という「家庭ディストピア」1>

「キモいおっさんにしか見えなくなった」

「幸福の科学に関わることを強要する親に耐えきれなくなって、親元を離れて生活をしていた。でも病気が悪化して仕事ができなくなった。親が幸福の科学学園の学費のために借り入れた奨学金や、生活のために借り入れたカードローンで、借金が300万円近くなってしまいました」  自己破産を申し立て、生活保護を受けて暮らす、幸福の科学信者2世の20代男性、Bさんだ。親は90年代からの幸福の科学信者だという。 「ほとんど記憶がないのですが、私は6歳くらいで三帰誓願という入信の儀式を受けさせられました。中学生の頃には、『サクセスNo.1』という教団施設内の学習塾に通わされました。サクセスNo.1に通うと、推薦枠で幸福の科学学園(中高一貫校)に入りやすくなるんです。学園は受験情報上、偏差値が高いことになっていますが、実際にはこういうルートで学力の低い子もたくさん入学しています。教団支部の信者たちの間では、子供を幸福の科学学園に入学させるのがものすごいステイタス。私の親は、支部長の勧めもあって私に学園入学を強要しました。私は、地元の友達と一緒に地元の高校に行きたかったのに」
幸福の科学学園

幸福の科学学園(栃木県那須町)

 学園では、社会科など通常の科目の授業ですら「坂本龍馬の過去世は劉備玄徳ですね」などと、教祖の霊言に基づいた教育が行われる。共産主義の祖であるマルクスは地獄に落ちた、幸福実現党は素晴らしい、といった調子で幸福実現党を称賛する政治教育も行われている。  政治教育も学校による政治活動も、教育基本法が明確に禁じている。県や文科省が放置しているのが不思議なほど教育基本法に反している学校だ。  しかもBさんが通った学園那須本校(これと別に関西校もある)は、周囲に民家も少なく外界から隔絶された立地にある。 「全寮制で、週末にシャトルバスに乗って町に買い物にいくだけで一日仕事。寮内では四六時中、ラジカセで大川隆法総裁の説法や祈りの言葉が流されています。寮生活のルールを破ったりすると、空き部屋に隔離されて授業にも出してもらえず、説法DVDを延々と見せられたり作務(掃除など)をさせられたりする。理由は、学園内の売店で万引きしたとか、門限を破ったとか、男子生徒が女子寮に入ったとか、トイレでセックスしていたとか、いろいろ」  この隔離措置は、筆写が取材した別の生徒や保護者たちの間で「独房送り」と呼ばれた懲罰だ。しかしドアに鍵はない。
学園の寮の部屋

学園の寮の部屋。空き部屋が生徒の隔離に利用された

「寮の空き部屋には、そもそもドアに鍵がない。これは日頃からプライバシーがないということで、寮のスタッフが生徒の不在中に勝手に部屋に入って持ち物検査をしたりする。霊言に基づいた授業や政治教育も含めて、当時の私達はとりたてておかしいことだとは思っていませんでした。ちなみに学園では、藤倉さん(筆者)は悪魔だと教えられていました。映画館で藤倉さんが学園生に声をかけて取材しようとしている場に居合わせた子などが、学園に戻ってから『今日、藤倉を見た!』などと騒いだりして、超有名人でしたよ」  信仰に疑問を抱くようになったきっかけは、2012年に当時の妻・きょう子氏との離婚が成立した大川総裁が、その1カ月後に29歳年下の教団職員と再婚したことだった。 「これ以降、大川隆法がキモいおっさんにしか見えなくなった」  それでも幸福の科学学園を卒業した。
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ハッピー・サイエンス・ユニバーシティという「鬼門」
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