三菱重工が、「H3」ロケット打ち上げを英民間企業から初受注できたワケ

日本のロケット産業にとっても弾みとなるか

 もっとも、他のロケットは、機体の再使用による大幅なコストダウンを図っており、H-IIAロケットの半額を目指すH3ロケットといえども、ふたたび世界水準から割高、ないしは価格面で優位とはいえない状況になる可能性もある。  また、H-IIAロケットが打ち上げ成功率や実績において他のロケットを追いかけ、そして追いついたように、今度は逆にオンタイム打ち上げ率において、他のロケットに追いかけられることにもなる。  H3ロケットの運用の成功と発展のためには、ロケットの再使用などをはじめとする、H3ロケットの改良、あるいはその後継機に向けた研究・開発など、たゆまぬ開発を進めていくことが必要となろう。  また、打ち上げが行われる種子島宇宙センターは、設備の老朽化が進んでおり、周辺の道路や空港などのインフラにも不都合を抱えている。将来にわたって着実に打ち上げができるようにするためには、そうした設備、インフラの抜本的な改修、整備も必要となろう。  今回の契約が、今後の受注活動だけでなく、H3ロケットや、その後継機の研究・開発、打ち上げを支える環境の改善など、日本のロケット産業全体にとっても弾みとなることを期待したい。
種子島宇宙センター

H3ロケットの打ち上げが行われる種子島宇宙センターの大型ロケット発射場(筆者撮影)

<文/鳥嶋真也> 宇宙開発評論家。宇宙作家クラブ会員。国内外の宇宙開発に関する取材、ニュース記事や論考の執筆などを行っている。新聞やテレビ、ラジオでの解説も多数。 著書に『イーロン・マスク』(共著、洋泉社)があるほか、月刊『軍事研究』誌などでも記事を執筆。 Webサイト: http://kosmograd.info/ Twitter: @Kosmograd_Info(https://twitter.com/Kosmograd_Info) 【参考】 ・英インマルサット社と三菱重工、新型基幹ロケットH3での打上げで民間企業と初の合意 打上げは2022年以降を予定|三菱重工(https://www.mhi.com/jp/news/story/181206.html) ・Inmarsat first customer for new MHI launch vehicle – News – Inmarsat(https://www.inmarsat.com/news/inmarsat-first-customer-for-new-mhi-launch-vehicle/) ・JAXA | H3ロケットの開発状況について(http://www.jaxa.jp/press/2018/11/20181129_h3_j.html) ・JAXA | H3ロケット(http://www.jaxa.jp/projects/rockets/h3/index_j.html
宇宙開発評論家。宇宙作家クラブ会員。国内外の宇宙開発に関する取材、ニュース記事や論考の執筆などを行っている。新聞やテレビ、ラジオでの解説も多数。 著書に『イーロン・マスク』(共著、洋泉社)があるほか、月刊『軍事研究』誌などでも記事を執筆。 Webサイト: КОСМОГРАД Twitter: @Kosmograd_Info
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