自民党古参議員も知らぬ「安倍と私兵」による改憲推進
先日、本サイトでも言及したように(参照:
自民党さえ無視し、日本会議との二人三脚で改憲を進める安倍首相)、自民党の改憲推進本部は、下村博文本部長と山口泰明組織運動本部長との連名で「各選挙区支部における『憲法改正推進本部』の設置等について(要請)」なる文書を全国の衆議院選挙区支部長宛に発行している。
この中で党中央の改憲推進本部は、「憲法改正国民投票に向けた民間団体の行う連絡会議の設立への協力」を、すべての自民党支部長=つまりは、自民党国会議員に対して要請している。
先日の原稿では、自民党改憲推進本部のいうこの「民間団体」とは、全国規模で運動を展開できる市民団体のうち改憲を謳う団体は日本会議しかないのだからという類推を重ねて「
日本会議しかありえない」と指摘するにとどまった。
しかし、今回のイベントで、日本会議自らが「憲法改正の意義を伝える推進拠点作りが進み、その数は現在202を数えるに至っております」と誇っているのだから、自民党改憲本部のいう「憲法改正国民投票に向けた民間団体の行う連絡会議」はすなわち、日本会議以外にはありえないと、日本会議自らが認めた格好だ。
先日も指摘したとおり、自民党には目下、
具体的な改憲案がない。平成24年に作成された「改憲草案」はいつのまにか放擲されている。今年の党大会で初めてお披露目された通称「4項目」とよばれる例のペーパーも、「改憲項目」を列挙するだけの代物であり、具体的な条文には踏み込めていない。しかも、
「4項目」は党内の正式な議決機関の承認を受けたものではない。
だが現実には、自民党の改憲推進本部は
党の正式な議決を経ることなく日本会議との協働を呼びかけ、日本会議は全国で自民党の運動に対応できる拠点づくりが順調に進んでいることを誇る。これは何とも奇妙なことではないか。
臨時国会での憲法審査会開催が取りざたされるようになって以降、主に自民党の古参国会議員に取材を重ねてきた。キャリアの長い国会議員であればあるほど、「いまの改憲推進本部には、
憲法の素人しかいない」「安倍さんが今言ってることは、『
なんでもいいから改憲させろ』でしかない。これまでの党内議論とか完全に無視だよ」「ありゃ、
安倍さんの私兵集団」と、執行部の推める改憲作業に疑義の声をあげる議員が多い。
改憲推進本部と日本会議の運動がここまで綺麗に同期しており、自民党そのものよりも日本会議こそを改憲作業のパートナーとして選んだかのように見える今の自民党執行部の姿をみていると、古参議員たちが「ありゃ、安倍さんの私兵集団だ」と嘆くのにも納得ができるだろう。
党内からも「私兵集団」と呼ばれる、安倍首相とその周辺による改憲作業。
いうまでもなく、憲法を改変する作業が「私兵集団」による公私混同の代物であっていいはずはなかろう。
<取材・文/菅野完>
すがのたもつ●本サイトの連載、「草の根保守の蠢動」をまとめた新書『
日本会議の研究』(扶桑社新書)は第一回大宅壮一メモリアル日本ノンフィクション大賞読者賞に選ばれるなど世間を揺るがせた。現在、週刊SPA!にて巻頭コラム「なんでこんなにアホなのか?」好評連載中。また、メルマガ「菅野完リポート」や月刊誌「ゲゼルシャフト」(
https://sugano.shop)も注目されている
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