国際交流は「しぐさ」も重要。しぐさの地域差は違和感の原因にも

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 こんにちは。微表情研究家の清水建二です。本日から3回にわたり「清水建二の微表情学」のスピンオフとして、しぐさ、について理解を深めていきたいと思います。  書店の心理学やコミュニケーションコーナーに所狭しと並ぶしぐさに関する書籍。Amazonなどでもこうした類の書籍は沢山あります。また雑誌やWebにもしぐさに関連する記事は、日々目にすると言っても過言ではないくらい溢れています。  こうした書籍や記事の目的は主に二つにわかれると思います。一つは「しぐさからウソの見抜き方を学ぼう。」です。もう一つは「旅行で、ビジネスで海外に行くときに誤解を生むしぐさや失礼なしぐさをしないように気をつけよう。」というものです。

そのしぐさ、日本人もする?

 ウソの見抜き方については、基本的に非明示的に、アメリカ人やイギリス人特有のしぐさをとり上げ、「これがウソのサイン」と解説されます。問題は、そのウソのサインが真であるとしても、日本人に対しては当てはまるとは限らない、いや、当てはまらない可能性の方が高いということです。この傾向は翻訳本だけでなく、日本人著者によって書かれた書籍にも多く見られます(日本の著者の場合、海外の研究に盲目的に依拠していたり、他書籍の孫引きや聞きかじりの知識で書かれた書籍に多いです)。  例えば、「片方の肩が微妙に上がる」しぐさをウソのサインと解説しているものがあります。これは微動作という現象です。微動作とは、抑制された感情や意図が断片的な身体動作として現れる現象のことです。アメリカ人が「わからない。」「確かではない。」を動作で現わそうとするとき、両方の手のひらを上に向け、腰の少し上前方でその手を少し上にあげます(「ほら、私は何も見せるものがありませんよ。」と言っている感じです)。同時に両肩をすくめます。また首は横に振りながら、両口角は下げ、両眉をあげます。これが「わからない。」「確かではない。」を意味するフルのしぐさです。 「あなたはこの件について知っていますか?」と問われ、本当は知らないのに「知っている。」とウソをついたとしましょう。そんなとき、咄嗟に出てしまうこのフルのしぐさを抑制しようとします。すると、抑制しきれなかったしぐさが、例えば、「両肩をすくめる」の片方の肩だけが断片的に残り、「片方の肩が微妙に上がる」という微動作として現れます。  このしぐさは世界各地で広く行われ見られるものの、極東地域、ことに、一般的な日本人はしないということを知らなければ、この知識は使い物になりません。それどころか誤った知識に基づいて人を判断してしまいかねません。この手の書籍を読むときに必要なのは、これは誰によってなされるしぐさなのか、という視点です。残念ながら、多くのしぐさとウソを関連づけようとする書籍にはそれが明示的に示されていません。
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違いに卑屈になっては本末転倒
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