民主主義の重要な要素である投票は、各人が理性的で公平かつ公正に判断することが前提だ。
しかし、実際にはそんな人間はごく少数であることがジャイソン・ブレナンを始めるとする政治学者の研究でわかっている。つまりもっとも民主主義的なプロセスであるはずの投票行動に問題があり、簡単にポピュリズムに堕してしまう可能性がある。
それを防いでいるのは制度にはない防御システムだった。前述の『
民主主義の死に方』によれば
”柔らかいガードレール”が機能していたのだという。
たとえばアメリカの大統領選においては、政党内での候補者の調整において民主主義の価値感に反する者が排除されたり、仮に大統領になったとしても超党派でその動きを制限したりしてきた。
ドナルド・トランプが大統領になれたのは十年以上の時間をかけて、アメリカのじょじょに”柔らかいガードレール”が崩れてきた結果なのだという。アメリカの場合は、2010年に
無制限の献金が認められたことと、SNSの普及によって
代替的なメディアが爆発的に増えたことがガードレール崩壊の原因だ。
そのガードレールの本質は、
相互的寛容と組織的自制心。つまり、たとえ対立する政党あるいは政治家であっても、相互に寛容で、権力を握ったとしても自制心を持って運用しなければ民主主義は死んで全体主義化する。
もっとも注意すべきなのは
過激な極論である。現在、日本では
SNSの普及や
政治家の発言によって広がりつつある「攻撃してもよい」雰囲気が過激な極論を擁護し、拡大する効果をもたらし、民主主義を危機にさらしている。