個人の力では防ぎようのない土壌汚染。せめて事前に知る術があると良いが……
今年6月、土壌汚染対策後にもかかわらず地下水から環境基準の約170倍というベンゼンが、ほか敷地内複数箇所からシアンが検出され大きく危険性が報じられた豊洲市場。
健康被害へ派生するのではという懸念やイメージ問題などから、多くの人が怒りをもって問題提起していたが、不動産の値付けや評価という観点から意見をしてみると、健康被害が発生するようなことはまずなく、用途から考えても値下げに値するものとは言い難い。
ただ、気にする人も多いので少し値段を下げる。そんな程度。
土壌汚染の歴史を振り返ってみても、汚染が広がった水源を農地で利用したケース、汚染の広がった水が川や海に流れ込み食物連鎖で人体に影響が出たケース、汚染の広がった地下水を直接飲用水としていたケースが主となり、発生自体も1950年代から1970年代が中心で地下水がそのまま生活に利用されていた時代、工業用排水が垂れ流しにされていた時代のものが代表例だ。
もちろん2000年代に入ってから宅地開発で土壌汚染が裁判沙汰になったこともある。
この事例では土壌汚染の説明がなかったマンション建設地の土壌から汚染が認められ、建設した事業主側が住民側に対し、購入額の25%を補填することとなった。とは言え、その後住民の健康被害は発生しておらず、土壌汚染騒動として全国区で報じられたにもかかわらず、マンションの価格は下落することもなかった。
そもそも土壌汚染の特殊性として第一に「体感しにくい」「有害性を直接的に体感できません」「異常性を認識しにくい」「有害性を感じにくい」と様々な言葉を用いた前置きが必要となる。必要以上の危険性を煽るのは筋違いといったところだが。
ではなぜ土地取引に土壌汚染の情報が盛り込まれ、説明責任が生じるようになったのかと言えば、時代はバブル崩壊後に遡る。
バブルの崩壊により土地価格が大幅に下落。この下落から割安感が生まれた日本の土地に目をつけたのが、アメリカの企業やファンドだ。そんな彼らの土地購入を容易にするため、アメリカの土地取引ルールに大きく譲歩する勢力がいたということだ。
地味な部分なので大きく報じられてはいないが、この譲歩に関しては今も一言物申したいという不動産関係の人間がゴロゴロと燻っている。