高射幸性パチスロ機の撤去が延期に。業界内の「ねじれ現象」は何をもたらす?

ホールの声は「正直、助かっている」

 中古機はどうか。  参考までに、パチスロ機をホールが新台で買った場合は、1台あたり、おおよそ35万円~45万円である。しかしホールで人気のある中古パチスロ機は、1台あたり200万円~3000万円(パチスロ聖闘士星矢は400万円)まで高騰した。ホールでの稼働が見込める遊技機は新台の3倍以上もする。手頃な価格の中古機だと、お客さんが見向きもしてくれない。資金力のある大手ホール企業ならまだしも、中小ホールはもう手も足も出ない。  新台が販売されない。中古機も買えない。だから全日遊連は、高射幸性パチスロ機の設置比率15%の期限を、せめて6号機が十分な数販売され、更にその6号機が、中古機市場でも購入出来るようになるまで延期すると発表したのだ。  この全日遊連の決定を、ホール現場はどう思っているのか?  都内某ホールの店長は言う。 「11月の閑散期、年末年始の繁忙期を考える時、高射幸性パチスロ機は売上の柱ですから正直ホッとしています」  本音だろう。ただでさえ、パチンコの市場規模は縮小の一途を辿り、目に見えてお客さんは減っている。ヘビーユーザーが好む高射幸性パチスロ機が稼ぎ出す売上は、店舗の営業成績に直結する。しかしそもそも設置比率を15%まで引き下げるのは、1月末である。どちらにせよ、それまでは高射幸性パチスロ機をホールに設置出来るのである。何が違うのか? 「まずは、高射幸性パチスロ機に代えて設置する予定だった入替台を購入しなくてすみますからね。それだけでも大きなプラスです」  更に言えば、既にホールから撤去した高射幸性パチスロ機の再設置も考えているという。設置比率15%まで削減する期限が伸びたという事は、逆に言えば、前段の目標数値であった設置比率30%まで引き上げる事も可能だからだ。事実、「ハーデス」や「バジリスク絆」、「モンスタハンター月下雷鳴」等の増台を銘打った入替広告が目に付くようになった。  建前は「全体止まれ!」であるが、事実上は「全体逆行!」である。  政府が推進するギャンブル等依存症対策の煽りを受けながら、パチンコ業界では喧々諤々の議論を経て、それでもどうにか全体感を持って独自の対策を進めてきた。しかし今回の「無期延期」が、業界が維持してきた結束をうやむやにしてしまうのではないか。パチンコ業界の未来を憂う。 <文・安達 夕 @yuu_adachi
Twitter:@yuu_adachi
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