カルロス・ゴーン報道に垣間見える「昭和」の呪縛 「サラリーマン文化時評」#6

平成が終われば昭和も終わる?

 あれから20年近くがたち、日本の大手老舗企業の多くは、アメリカや中国、韓国の企業にすっかり後れを取ってしまった。しかし、そんななかでも、経営のグローバル化にいち早く対応した日産は見事に復活し、真のグローバル企業として発展している。  インターブランド社のレポートを見ると、日産の企業価値は‘03年の25億ドルから‘18年の122億ドルへと5倍近くに飛躍している。それは明らかにゴーンの功績だろう。彼は破壊者であると同時に救世主でもあったのだ。  しかし、今回の事件報道を見る限り、日本社会は今でも相変わらずゴーンを恐れ、排除しようとしているように思える。「ゴーンの報酬が高すぎる」というコメントが目立つのは、それが日本人の引きずる一億総中流意識を刺激するからだろう。昭和の残像はまだ今でも我々をやるせなく悩ませる。  ただ、それももうすぐ終わるような予感はしている。高度経済成長期の記憶がないどころか『明日があるさ』キャンペーンの記憶すらおぼろげで、缶コーヒーも飲まなくなった30代以下の人たちが、今や社会の中心を担い始めているからだ。  カルロス・ゴーンという黒船が来ても大きくは変わらなかった昭和的価値観が、更に温存されるのか、それとも一気に更新されるのか。それはこれから待ち受ける東京オリンピックと大阪万博が、過去を向いた昭和の亡霊のお祭りに終わるのか、それとも明日を向いた新しい世代の希望になるのか否かにかかっている。 <文/真実一郎> 【真実一郎(しんじつ・いちろう)】 サラリーマン、ブロガー。雑誌『週刊SPA!』、ウェブメディア「ハーバービジネスオンライン」などにて漫画、世相、アイドルを分析するコラムを連載。著書に『サラリーマン漫画の戦後史』(新書y)がある。Twitterアカウントは「@shinjitsuichiro
サラリーマン、ブロガー。雑誌『週刊SPA!』、ウェブメディア「ハーバービジネスオンライン」などにて漫画、世相、アイドルを分析するコラムを連載。著書に『サラリーマン漫画の戦後史』(新書y)がある
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