アメリカで存在感を増す反トランプの草の根運動。日本のリベラルも学ぶべきその手法とは?

ネットで入手可能な23ページの「反トランプの手引き」 どのような内容になっているのか?

 インディヴィジブル運動の最も大きな特徴は、個人や小さな団体をインディヴィジブルというコミュニティをベースに緩く繋いでいくというものだ。加えて、これまで政治にそれほど大きな関心を示さなかった有権者でも、それぞれの地元で何ができるかをまとめたハンドブックをオンライン上で公開しており、もちろんダウンロードやプリントアウトも可能だ。ハンドブックは23ページにまとめられており、全てに目を通すのに30分もかからない。(参照:「indivisible.org」)

トランプの政策に対する抵抗のための実践ガイド

 2016年12月に公開されたガイドブックは、冒頭にインディヴィジブル運動を設立した経緯や、今後のアメリカ社会をどのようにしたいかという思いが書かれている。その後、過去のティーパーティー運動に関する分析結果が記載されている。興味深い点としては、右派のティーパーティー運動を正面切って批判するのではなく、ティーパーティーの成功事例を紹介しながら、なぜそれらに対してインディヴィジブルが賛同できないかを1つずつ紹介していることだ。ティーパーティーの功罪を検証したうえで、インディヴィジブルがどのような運動を展開するべきかという流れになっている。  そして、ハンドブックはそれぞれの選挙区にいる議員が共通して持つ、ある「習性」について言及している。どの選挙区でも、現職の国会議員が最も気にすることは再選することであると結論付け、それぞれの選挙事務所が優先して行う業務(有権者との会合やメディアとの良好な関係の構築など)を、それらを行う理由も説明して紹介している。  有権者の議員に対する思いと、議員の有権者に対する思いには大きな隔たりがあるという事実も、実例をリストアップして紹介している。例えば、議員は個人単位での有権者には興味を示さないが、有権者が1つのグループにまとまった場合は、議員の対応が間違いなく変わるといった具合だ。また議員によって提出される法案の内容は、有権者個人の意見や陳情では何も変わらないが、大きな支援が見込める利益団体を動かすことができれば、法案の内容にも大きな影響を与えることが可能であるといった現実的な手法も紹介されている。  ハンドブックでは個人ではなく、同じ政治信条を持った有権者と共闘することの必要性が説かれている。それぞれの地元で「緩い」グループを作ることを決め、メンバーを集めていくが、早い段階で何人かの共同主催者を指名することが重要だと説く。共同主催者となる人物が異なるソーシャルメディアを利用していれば、情報発信のリーチ先が広がるため、ソーシャルメディアの種類の多さも重要視されている。複数の共同主催者を確保できたら、そこからメーリングリストソーシャルメディアを駆使して、より多くの参加者を集める戦略だ。メンバーの多さやグループの大きさが、議員を動かすという考えが基本となっている。
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ソーシャルメディアをフル活用
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