ゴーンの後継者としてフランスの大物極右政治家が浮上。~フランス極右と日本の危険な関係1

ブルーノ・ゴルニッシュと日本社会

 ところでリヨン大学の教授も務めていた極右政治家のブルーノ・ゴルニッシュは、何の授業を担当していたのでしょうか?政治学?ヨーロッパ史?  実はそうではなくて、ゴルニッシュは、日本語と日本文化を教える教員だったのです。彼はフランスの東洋言語研究所で日本研究の専門家として学位を取得しており、なんと京都大学での一年半の留学も経験しています。  そう、極右政治家ゴルニッシュは、日本文化を愛する日本学者であり、日本人女性と結婚し、日本語を話す、そんな日本大好きフランス人なのです。  日本文化の愛好者が増えるのは良いことですが、それが有罪判決を受けているような危険な極右思想の持ち主である場合は、歓迎すべきではありません。  特に第二次大戦のナチスドイツによって行われた人道に反する戦争犯罪を矮小化するような言動は、「歴史修正主義」「否定論」と呼ばれ、ヨーロッパでは非常に警戒されています。  こうした思想の日本版と言われるようなものが、残念ながら日本でも一部の右派の政治家の間で浸透しているのは事実です。例えば、大日本帝国によるアジア各国の戦争被害を否定したり、植民地統治を肯定したりする言動が、しばしば行われています。  ゴルニッシュのように日本語を話し、日本との交流を望むフランスの極右政治家が、日本の極右政治家と手を結ぶことで、このような歴史修正主義運動が拡大する危険性があります。  実はそうした危険な兆候は既に現実化しており、例えば「LGBTには生産性がない」などといった差別的な発言で世間を騒がせた自民党の杉田水脈は、自身のブログでゴルニッシュとの交流を自慢しています。以下のツイートも、ゴルニッシュの考えを日本で紹介するためのものです。  もしもフランス各紙が報じている懸念が実現し、ゴルニッシュがルノーの会長になるようなことがあれば、日本の経済界においてもその影響力は強まり、危険な極右運動の拡大という意味で日本社会全体に大きな負の影響を与えることになるでしょう。  日本で暮らす人びと全体に関係する問題として、こうした極右政治家の行動に注視するとともに、ルノーの後継者問題の行く末を見守りましょう。  さて、ブルーノ・ゴルニッシュだけでなく、実は冒頭に書いた通り、ヨーロッパの人種差別主義者や極右活動家の中には、日本文化の愛好者が驚くほどたくさんいるのです。「白人」であることに価値を見出す彼らが、アジアの島国である日本に関心を持っているというのは不思議に思えるかもしれません。いったい日本文化の何が、彼らを惹き付けるのでしょうか?  次回、「フランス極右と日本の危険な関係」の第二回では、日本に亡命するフランスの極右活動家のことを紹介しつつ、そのような点についても迫りたいと思います。 <文/山下泰幸 TwitterID:@yasu9412> やましたやすゆき●フランス・パリ在住の大学院生/研究員。専攻は社会学で、フランスで暮らすイスラーム教徒の置かれている現状について調査を行っている。世界各国のレイシズムの問題や、移民・難民を巡る状況についても関心を持っている。共同ブログ『メトロ13番線』の運営者でもあり、本記事も同ブログからの転載となる。
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