消費者庁の有識者会議で、遺伝子組み換え表示制度の改正が検討された
遺伝子組み換え食品が食卓に上るようになってから20年が経つ。消費者は、一部の食品にしか表示の義務がない今の表示制度では「遺伝子組み換え食品を避けたいと思っても選択できない」として、表示の見直しを求めてきた。
食品の表示制度を担当する消費者庁は、検討会を設置。昨年4月から1年間検討を重ねてきた。その結果、義務表示対象の拡大など制度上の変更はないが、唯一「遺伝子組み換えでない」表示の条件を「遺伝子組み換え不検出」という厳しい条件とした。そのため消費者は「『遺伝子組み換えでない』という表示がなくなる」ことを懸念、「消費者の知る権利よりも事業者の実行可能性に配慮した結果だ」として再検討を求めている。
最も組み換え作物が使われている、油やしょう油は表示なし
遺伝子組み換え食品が導入された当時は、各地で反対集会やデモなどが行われた
1996年、厚生省(現厚生労働省)は7品種の遺伝子組み換え作物を、食品としての安全性が確認できたとして国内での栽培・販売及び輸入を承認した。承認されたのは、ダイズ1品種(除草剤耐性)、トウモロコシ2品種(害虫抵抗性)、ジャガイモ1品種(害虫抵抗性)、ナタネ3品種(除草剤耐性)の7品種。(現在承認されているのは8作物319品種)
消費者にとっては、これまで想像もしてこなかったものが食卓に上ることになり、不安が広がっていった。「遺伝子組み換えって何?」「食べて大丈夫なの?」「どんな食べ物に入っているの?」「食べたくないけどどうしたらいい?」……消費者の間では、選択権を確保するために表示を求める声が高まっていった。1996年12月には東京都議会が国に対し表示を求める意見書を提出している。
こうした動きを受けて、政府は2001年に遺伝子組み換え食品の表示法を施行したが、義務表示の対象となったのは一部だけだった。(現在義務表示対象となっているのは、大豆、とうもろこし、ジャガイモ、アルファルファ、テンサイ、なたね、綿実、パパイヤの8農産物と33加工食品群)。
これらの食品は、遺伝子組み換え原料が使われている場合は「○○(遺伝子組み換え)」と表示、分別生産流通管理されていない場合は「○○(遺伝子組み換え不分別)」と表示する。また、分別生産流通管理された非組み換え農産物が原料となっている場合は表示不要であり、任意表示として「○○(遺伝子組み換えでない)」と表示することができる。
「分別生産流通管理=IPハンドリング」とは、非組み換え農産物が生産地から消費地に運ばれるまでの間(農場→カントリーエレベーター→貨物船→消費地のサイロ→加工場など)、組み換え農産物と混じらないように管理し、そのことが書類等で証明されていること。
「意図せざる混入」とは、分別生産流通管理によって適正に管理されていても、一定量の組み換え農産物が混入することは避けられないとして、日本では5%までを意図せざる混入として認めることとした。意図せざる混入率が5%以下であれば「遺伝子組み換えでない」と表示できるとした。
1998年、関西の生協は「遺伝子組み換え作物・食品は食べたくありません」と読売新聞に全面広告を出した
消費者側はこれを「不完全な表示制度」であると、不満を隠さない。なぜなら表示義務が課されているのは一部の食品だけで、もっとも多く流通している大豆油、ナタネ油、コーン油、綿実油などの植物油やしょう油の場合「製品中に遺伝子組み換えたん白質が残存していないため遺伝子組み換えかどうかの確認ができない」として、表示義務の対象外となっているからだ。また、5%までの「意図せざる混入」があっても「遺伝子組み換えでない」と表示することができる。
EUが2001年に導入を決めた「全食品表示、意図せざる混入の許容は0.9%まで」とする表示基準と比べると不十分であるとして、消費者はEU並みの表示制度を求めてきた。