訪米した玉城デニー・沖縄県知事、辺野古基地の「軟弱地盤の問題」や「利権の存在」を訴える

 玉城デニー・沖縄県知事は11月11~16日に訪米、沖縄の“民意”としての辺野古新基地建設見直しをアメリカ本土で訴えた。

軟弱地盤の問題はまだ解決していない

全日程を終えた後

訪米での全日程を終えた11月14日夕方、沖縄県のワシントン事務所で総括的な囲み取材をする玉城デニー知事。国務省での面談や、上下院議員との面談の内容などについて説明した

 11月11日はニューヨーク大学で講演、講演時間は約2時間におよび、参加者の質問に答える時間も1時間近く取られた。質疑応答の中で、玉城知事が「軟弱地盤問題」について説明する場面もあった。これは、翁長雄志・前知事が病床で指示を出したといわれる、埋立承認撤回の根拠の一つになった問題だ(参考記事「辺野古基地建設強行は『地方自治の破壊』。謝花喜一郎・沖縄県副知事、怒りの訴え」)。 「8月31日に沖縄県が日本政府の防衛省に対して、埋立承認の撤回を法律に基づいて正式に出しています。その中には、(新基地予定地の)海底には軟弱な地盤があって、しかも軟弱地盤の下には活断層まである問題が明らかになるなど、費用の面でも工事期間の面についても説明が全くなされていないことを問題にあげています。 (軟弱地盤の改良などで)沖縄県知事の許可も得ないといけない手続きも出てきます。そこで、さらに問題が起こってくることは容易に想定できます。私は、日本と米国と沖縄の三者で対話を行って、『辺野古新基地計画は止めるべきである』と明確に伝えないといけないと思っているわけです」(玉城知事)  この軟弱地盤問題については、玉城知事や謝花副知事ら県のトップが何度も警告を発している。このまま埋立工事を強行して軟弱地盤の上に土砂投入をしても、地盤沈下や液状化で米軍の使用に耐えない“欠陥基地”にしかならない恐れが十分にあるのだ。

米国側に「(軟弱地盤強化の)工事にはまだ時間がかかる」と伝える

国務省で面談

14日午前、ワシントンの国務省で面談をする玉城知事。国務省のマーク・ナッパー国務次官補代理、国防総省のポール・ボスティ日本部長代行らが出席。軟弱地盤問題を玉城知事が説明しても、国務省は「辺野古が唯一の解決策」という姿勢を変えることはなかった(写真/沖縄県)

 14日の米国務省での面談でも、玉城知事はこの問題を説明していた。最後の総括的な囲み取材で「“欠陥基地”になる恐れがあることを伝えても国務省(の反応)は『考えを変えない』ということだったのでしょうか」との質問に対し、玉城知事はこう答えた。 「国務省と国防総省(との面談で)は、私が説明をして、『これから先、(軟弱地盤を強化する)地盤改良などがあった時は知事の許可を求めないといけない。そうすると、その許可を出すのは知事自身なので、この工事にはまだまだ完成までに時間がかかることは十分に予測される』ということも言っておきましたが、それらについてトータル的に国務省や国防総省からはコメントはありませんでした」  この囲み取材で玉城知事が使った表現は「新基地建設がデッドロック(膠着状態)になるということ」。たとえ日米両政府が沖縄と対話せずに埋立工事を強行しても、軟弱地盤対策(地盤改良工事で地盤を強化)には知事の許可が必要なので“欠陥基地”にしかならないと伝えたのだ。  辺野古新基地の反対運動を長年続けている東恩納琢磨・名護市議は、こう話す。 「日本政府は新基地予定地の地盤調査をしていますから、想定以上の軟弱地盤であることに気がついてはいるでしょう。しかし、米軍や米国政府の関係者に正確に伝えていない可能性が高い。今回の訪米で玉城知事が軟弱地盤問題を話したことは、非常に意味があります」  面談直後に国務省は「辺野古が唯一という姿勢は揺るぎない(変わらない)」という声明を出したが、今回の玉城知事の直訴で「本当に日本政府の言っていることは大丈夫なのか」といった疑問がアメリカ政府内で芽生えることは十分に考えられる。
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当初の海上フロート案はなぜ変わったのか?
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