日産スペインが「ゴーン会長逮捕」の報に気が気でない理由

生産台数低下でリストラ待ったなしの日産スペイン

 以上の経緯を得て現在に至った日産スペインであるが、最近は業績が不振となっている。今夏からパルサーとエヴァリアがバルセロナの工場で生産されなくなって、それに代わるモデルとして日産NV200(燃料ガソリンまたは電気 )とピックアップ車の日産ナバラ、ルノーアラスカン、メルセデス・ベンツX クラスが生産台数においてその穴埋めを果たしていない状態が続いているという。  パルサーについても、「昨年2万-2万5000台生産されたが、スペイン国内では僅か4700台販売されただけで、セアット(SEAT)の同じタイプのレオンは3万5400台を国内で販売しているということで、日産スペインは業績に伸びがない状態にある。  しかも、日産スペインで生産する新しい車種が決まるのも2021年か、遅くなって2022年まで待たねばならないといわれている。(参照:「La Vanguardia」、「Cocheando」)  2016年の生産台数11万台をピークに、昨年は8万9000台しか生産されていない。更に、今年は8万300台を見込んでいるというのである。これが意味するものは冒頭で触れたように100人の余剰雇用が発生することになるというのである。  失業率の高い(15%)スペインで職場を失うというのは深刻な問題となる。ましてや、中年の失業者が新たに雇用先を見つけるのはほぼ不可能である。だから、日産スペインの労働組合はゴーン会長の逮捕には非常に敏感になっているという。というのも、ゴーン会長のもとでルノー日産の最高経営者として日産スペインの発展に貢献していたホセ・ビセンテ・デロス・モソスが最近そのポストを離れたのである。それが、より一層日産スペインの従業員を不安にさせているという。(参照:「La Vanguardia」、「La Vanguardia」)  日産スペインが微かに期待しているのは英国のサンダーランドの工場がBrexitの影響を受けて、そこで生産されている車種SUVキャシュカイ、ジューク、リーフ、インフィニティーQ30のどれかが欧州連合において唯一の日産工場となる日産スペインで生産されることになるように望んでいるということだ。  日産スペインの前途は多難である。 <文/白石和幸> しらいしかずゆき●スペイン在住の貿易コンサルタント。1973年にスペイン・バレンシアに留学以来、長くスペインで会社経営から現在は貿易コンサルタントに転身
しらいしかずゆき●スペイン在住の貿易コンサルタント。1973年にスペイン・バレンシアに留学以来、長くスペインで会社経営から現在は貿易コンサルタントに転身
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