安田純平氏の会見に「謝罪を求める日本社会は異常」「自己責任論は極右の思想」と欧米メディア特派員

政府の情報だけに頼ることの危険性を日本人は忘れたのか

安田純平外国特派員協会会見2 筆者は会見後、フランス国営放送の特派員に感想を求めた。 ―――安田純平さんの会見が行われましたが、どんな感想を持たれましたか。 「まず、解放されたことを心より喜びたいと思います。日本外国特派員協会や国境なき記者団が解放を求める声明を何度も出していたように、世界中で安田さんの安否が心配されていました。拷問にあったとも聞きました。彼は勇敢なファイターだと思います」 ―――日本では安田さんやご家族に対して「自己責任」だとか、「日本政府に謝罪せよ」といった言説が多数流されました。 「極めて残念で哀しいことです。戦地や紛争地に赴き、中立な立場から報道する戦場ジャーナリストは民主主義社会にとって不可欠な存在です。たとえば、ベトナム戦争を終結させたのも、戦場ジャーナリストたちが、無垢な人々が凄惨な目に遭っていることを世界に発信し、反戦の世論が起きたからです。 『自己責任』という人は、では政府だけのバイアスのかかった情報に頼るべきだと考えるのでしょうか。大本営発表に頼るのは民主主義の姿ではありませんし、それを痛いほど分かっているのは、日本人ではないでしょうか。  安田純平さんは戦場ジャーナリスとして豊富な経験を持ち、誰よりも慎重に慎重を期して、取材に臨まれることは多くの仲間の記者が証言しています。その安田さんですら拘束されてしまうほどに、混沌としているシリア情勢に思いをはせるべきでしょう」
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「自己責任論」は極右の思想
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シリア拘束 安田純平の40か月

2015年6月に取材のためシリアに入国し、武装勢力に40か月間拘束され2018年10月に解放されたフリージャーナリスト・安田純平。帰国後の11月2日、日本記者クラブ2時間40分にわたる会見を行い、拘束から解放までの体験を事細かに語った。その会見と質疑応答を全文収録。また、本人によるキーワード解説を加え、年表や地図、写真なども加え、さらにわかりやすく説明。巻末の独占インタビューでは、会見後に沸き起こった疑問点にも答える