そんな中、トラックドライバーたちとって、唯一「町中のオアシス」となるのが、「駐車場に大型トラック専用レーンを設置しているコンビニ」だ。
都心にはほとんど存在しないが、駐車場のスペースが広く取れる郊外や、高速道路の入口付近などでは、目にすることがある。
誰の邪魔にもならず、トイレや温かい食事にまでありつけるのは、精神的にも肉体的にも疲労感が全く違う。数年前までは、多くのコンビニが「大型トラックお断り」だったことを考えると、こうした変化はドライバーにとって、大変ありがたいことだ。
しかし、トラックが路上で邪魔者扱いされないようになるまでには、まだまだ数は足りていない。いや、「足りていない」というよりは、クルマの通りが少なく車線も多い郊外よりも、交通量が多く、狭い道が入り組む都心や住宅街近くにこそ欲しい場所、といったほうが正しいのかもしれない。
さらに、彼らの弊害になっているのが、大型車専用レーンに駐車する乗用車の存在だ。
徹夜明け、運よく見つけた「駐車できるコンビニ」で、同レーンに収まる一般車に気付いた時の落胆度合は、後ろに積んだどんな荷物よりも重い。
スピードは出すな。途中休みも取れ。でも遅れるな。早く着いても近くで待つな。
もちろん、他車の迷惑になる行為は、決して許されることではない。が、前回にも述べたように、トラックの世界には、ドライバーが無意識に起こしてしまうマナー違反や、マナー違反だと知っていてもどうすることもできない、こうした「日本社会全体の構図」が存在する。
改正道路交通法により、街にはコインパーキングが急増し、路上駐車する乗用車は劇的に減少した。が、そのコインパーキングのほとんどは、大型車が止められるようにはなっていない。
我々の生活を下支えするトラックの存在。彼らを厳しく追及したり取り締まったりする前に、その存在を含めた環境を構築する必要があるのではないだろうか。
【橋本愛喜】
フリーライター。大学卒業間際に父親の経営する零細町工場へ入社。大型自動車免許を取得し、トラックで200社以上のモノづくりの現場へ足を運ぶ。日本語教育やセミナーを通じて得た60か国4,000人以上の外国人駐在員や留学生と交流をもつ。滞在していたニューヨークや韓国との文化的差異を元に執筆中。
フリーライター。元工場経営者、日本語教師。大型自動車一種免許取得後、トラックで200社以上のモノづくりの現場を訪問。ブルーカラーの労働環境問題、ジェンダー、災害対策、文化差異などを中心に執筆。各メディア出演や全国での講演活動も行う。著書に『
トラックドライバーにも言わせて』(新潮新書) Twitterは
@AikiHashimoto