トラックがやけに車間を詰めてくるのは理由があった。元トラック運転手が解説

一方、一般車ドライバーにも目の錯覚はある

 大概のプロトラックドライバーは、もちろんこうした現象を知っている。しかし、シフトレバーを握ってまだ間もない「初心者トラックドライバー」の場合、こうした現象に気付かなかったり、適切な車間がどれほどなのか、感覚が掴めていなかったりすることがあるのだ。  一方、一般ドライバーにも起きる「目の錯覚」がある。  既述通り、日本を走るほとんどのトラックには、ボンネットがない。そのため、前方の乗用車のルームミラーから後ろに止まっているトラックを見ると、その一面が「トラックの壁」となり、乗用車が止まっている時よりも車間が狭く感じたり、圧迫感を覚えたりすることがある。  特に、昨今巷で流行している「ミニバン」や「軽自動車」などの後方は、「セダン」のようにトランク部分が突き出ていないため、なおさら自分のクルマにトラックがくっついているように見えるのだ。  車体が大きく扱いが難しいトラックには、乗用車以上に安全運転に務める責任と、より高度な運転知識や技術を習得する義務がある。既述の通り、中には故意的に車間を詰め、大型車に乗ったことでなぜか気を大きくする悪質なトラックドライバーも存在する。  が、ほとんどのトラックドライバーは、これらの責任や義務を守り、真面目にひたすら日本の経済を運ぶ職人たちだ。  同じ道を走る仲。「トラックドライバー=マナーが悪い」と決め付けず、道路の安全環境構築のためにも、彼らが置かれている状況や見えている視界の違いを、まずは少しでも理解しようとしてほしいと願う。 【橋本愛喜】 フリーライター。大学卒業間際に父親の経営する零細町工場へ入社。大型自動車免許を取得し、トラックで200社以上のモノづくりの現場へ足を運ぶ。日本語教育やセミナーを通じて得た60か国4,000人以上の外国人駐在員や留学生と交流をもつ。滞在していたニューヨークや韓国との文化的差異を元に執筆中。
フリーライター。元工場経営者、日本語教師。大型自動車一種免許取得後、トラックで200社以上のモノづくりの現場を訪問。ブルーカラーの労働環境問題、ジェンダー、災害対策、文化差異などを中心に執筆。各メディア出演や全国での講演活動も行う。著書に『トラックドライバーにも言わせて』(新潮新書) Twitterは@AikiHashimoto
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