彼女が見つめ返したからと言って、あなたに気があるわけではない。研究者が明かす無慈悲な真実

同じ時間見つめ合っていても、男女で考えていることは違う

 次に視線が注がれる時間についてです。視線の向かう先に関心があるということから、当然その視線が注がれている時間は関心が注がれている時間ということになります。しかし、男女の恋愛状況では関心の継続時間は同じであっても内容に質的な違いがあることがわかっています。  初めてあった男女がお互いをデートに誘いたいかどうかを判断させる実験がStraatenら(2010)により行われました。男女の視線を計測したところ、次のことがわかりました。  男性は、外見が魅力的な女性に対して長い間視線を向ける傾向にあり、女性は、外見が魅力的・魅力的でない男性問わず両者に同じ時間視線を向ける傾向にありました。  つまり、デートの相手にしたいか否かを判断する際、男性に比べ、女性は相手の外見的魅力度の占める割合を相対的に低く見積もり、外見以外の要素にも関心が向いているということです。  これはなぜでしょうか?  それは私たちの祖先が、男性は外見から女性の健康度や子どもを産む能力を見積り、子孫を増やす戦略を成功させてきたからだと考えられています。  一方、女性も外見から男性の健康度や繁殖力の高さ、身体的な強さなどを見積もるのですが、それに加え、より重要な要素、家族を養ってくれるか、という観点に注視し続けてきたために、男性を受け入れるか否かに関して、外見的な魅力度が占める重みが男性に比べ相対的に軽くなり、優しさや誠実さ、強さ、経済力などの他の要素が重要な考慮の要素となってきたと考えられています(しかし、女性が男性同様に稼ぎ、主夫が増える今日、この実験結果がひっくり返っていることも十分あるかも知れませんね)。 「彼女は僕が彼女に向ける視線と同じだけ僕を見つめてくれている。彼女は僕に気があるに違いない。」と考えるのは早計かも知れないということです。  しかし、恋愛とは勘違いという偶然から生まれることも多々(ほとんど?)ありますので、恋愛に関する心理学は知らないほうがよいのかも知れません。 参考文献 Laura Vincze, Isabella Poggi. (2011). Communicative Functions of Eye Closing Behaviours, Analysis of Verbal and Nonverbal Communication and Enactment. The Processing Issues, Lecture Notes in Computer Science Volume 6800, pp 393-405. McCarthy A, Lee K, Itakura S, Muir DW. (2006). Cultural display rules drive eye gaze during thinking. J Cross Cult Psychol 37: 717–722. van Straaten I(1), Holland RW, Finkenauer C, Hollenstein T, Engels RC. (2010). Gazing behavior during mixed-sex interactions: sex and attractiveness effects. Arch Sex Behav. Oct;39(5):1055-62. doi: 10.1007/s10508-009-9482-x. Epub 2009 Mar 5. 【清水建二】 株式会社空気を読むを科学する研究所代表取締役・防衛省講師。1982年、東京生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業後、東京大学大学院でメディア論やコミュニケーション論を学ぶ。学際情報学修士。日本国内にいる数少ない認定FACS(Facial Action Coding System:顔面動作符号化システム)コーダーの一人。微表情読解に関する各種資格も保持している。20歳のときに巻き込まれた狂言誘拐事件をきっかけにウソや人の心の中に関心を持つ。現在、公官庁や企業で研修やコンサルタント活動を精力的に行っている。また、ニュースやバラエティー番組で政治家や芸能人の心理分析をしたり、刑事ドラマ(「科捜研の女 シーズン16」)の監修をしたりと、メディア出演の実績も多数ある。著書に『ビジネスに効く 表情のつくり方』(イースト・プレス)、『「顔」と「しぐさ」で相手を見抜く』(フォレスト出版)、『0.2秒のホンネ 微表情を見抜く技術』(飛鳥新社)がある。
株式会社空気を読むを科学する研究所代表取締役・防衛省講師。1982年、東京生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業後、東京大学大学院でメディア論やコミュニケーション論を学ぶ。学際情報学修士。日本国内にいる数少ない認定FACS(Facial Action Coding System:顔面動作符号化システム)コーダーの一人。微表情読解に関する各種資格も保持している。20歳のときに巻き込まれた狂言誘拐事件をきっかけにウソや人の心の中に関心を持つ。現在、公官庁や企業で研修やコンサルタント活動を精力的に行っている。また、ニュースやバラエティー番組で政治家や芸能人の心理分析をしたり、刑事ドラマ(「科捜研の女 シーズン16・19」)の監修をしたりと、メディア出演の実績も多数ある。著書に『ビジネスに効く 表情のつくり方』(イースト・プレス)、『「顔」と「しぐさ」で相手を見抜く』(フォレスト出版)、『0.2秒のホンネ 微表情を見抜く技術』(飛鳥新社)がある。
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