誰も気づいていない民泊の「社会貢献」的可能性~金欠フリーライター、民泊を始める(4)

民泊が救える人々がいる!

 そして、筆者にはもう一つ譲れない理由があった。おそらくはAirbnbの創業者ブライアン・チェスキーCEOも、日本の田邉泰之代表取締役も気付いていない民泊の可能性である。それは「DV被害者の保護」である。  拙著「貧困脱出マニュアル」では、筆者が中学時代に母親と二人でDVから逃れるために裸足で逃げ出した場面を書いた。あまりに忌まわしい思い出で、一部記憶がとびとびになっている点はご容赦願いたい。  はっきりしているのは、あの日が月曜だったということだ。TVドラマの主題歌で広瀬香美の曲が流れていたからだ。よって、事件が発生したのは夜十時すぎということになる。   ここで重要なのは、逃げ込んだ先が母の姉、つまり伯母の家だったということだ。当然、元父親も場所は知っている。しかも母が車を家の前に停めていたこともあり、簡単に発見され、さらに事態が悪化してしまった。  全くその後の人生においても一切役に立たない経験だったが、一つだけ学んだことがある。 「DV被害者は、親しい人の家に逃げ込んではならない」のである。夜十時以降にアポなしで飛び込める家など限られている。だから加害者からすれば発見するのは簡単なのだ。  その点、民泊であれば外見は普通の家だから区別はつかない。よって居場所の特定は著しく困難となり、仮に加害者が場所をつきとめてもそこには家の主という全くの他人がいるわけで、そこでは暴力を振るわない。DV加害者とは実は非常に理性的で計算高いのである。  具体的な方法としては、Airbnb公式サイトに、DV被害者用のホットラインを一本用意しておく。SOSの連絡が入ったら、我が家を含め近くで手配可能な家を紹介する。もっといえば、同社がDV被害者のために特別に費用の七割か八割を負担してあげるとなおよいのではないか。そうすれば同社の「内需拡大」と「社会貢献活動」を同時に実現できる。  今の筆者なら、そんな人たちに離婚のための弁護士や不動産業者その他必要な人物一同を紹介することができる。そして、もう一つの利点がある。  筆者の中学時代の同級生で母校の教師を務める人物がいる。講演会の機会などを作ってくれて感謝の限りだが、そんな彼が筆者の本を読み、「そこまで岡山に複雑な思いを抱いているとは知らなかった。連絡しないほうがいいのかなと思って……」という。  そんなことは全然ない。本当に嫌いならプロフィールその他に書いているはずがない。ある程度心の中で整理がついて、話せるようになっているからこうして公にできているわけだ。  事実だから言うが、筆者は同級生の出世頭である。中学の同級生は医者になったのが多く、高校の同級生にはキャリア官僚になったのもいるが、私のように本を10万部売ったヤツはいない。 「テレビに出ると親戚が増える」はよく聞く話だが、「本がベストセラーになると同級生が増える」のは確かだ。実際に25人乗り出てきた筆者が言うのだから間違いない。  滅多にない機会なので、筆者はこの同級生・恩師たちに会える限り会ってみた。そして昔のことを聞いてみたが、誰一人として我が家で何があったのか知らなかった。それくらい、筆者の中で「家の恥」という概念が強く染みついていた証拠である。  結局、かつての筆者も含めDV被害者は極度に閉ざされた世界に生きているということだ。  だが、一度全く他人の家に滞在し、そこにいる世界各国の「まともな家庭で育ったまともな人たち」と触れ合えば、自分たちがいかに異常な環境で暮らしているかを悟り、共依存・洗脳状態から抜け出せるようになる。  1990年代には絶対不可能だったことだが、21世紀の今ならたとえ裸足で逃げ出してもスマホとクレジットカードさえあれば何とかなるのだ。  そう考えると、探す家の条件が必然的に絞られていった。(続く) 【タカ大丸】  ジャーナリスト、TVリポーター、英語同時通訳・スペイン語通訳者。ニューヨーク州立大学ポツダム校とテル・アヴィヴ大学で政治学を専攻。’10年10月のチリ鉱山落盤事故作業員救出の際にはスペイン語通訳として民放各局から依頼が殺到。2015年3月発売の『ジョコビッチの生まれ変わる食事』は15万部を突破し、現在新装版が発売。最新の訳書に「ナダル・ノート すべては訓練次第」(東邦出版)。10月に初の単著『貧困脱出マニュアル』(飛鳥新社)を上梓。 雑誌「月刊VOICE」「プレジデント」などで執筆するほか、テレビ朝日「たけしのTVタックル」「たけしの超常現象Xファイル」TBS「水曜日のダウンタウン」などテレビ出演も多数。
 ジャーナリスト、TVリポーター、英語同時通訳・スペイン語通訳者。ニューヨーク州立大学ポツダム校とテル・アヴィヴ大学で政治学を専攻。’10年10月のチリ鉱山落盤事故作業員救出の際にはスペイン語通訳として民放各局から依頼が殺到。2015年3月発売の『ジョコビッチの生まれ変わる食事』は15万部を突破し、現在新装版が発売。最新の訳書に「ナダル・ノート すべては訓練次第」(東邦出版)。10月に初の単著『貧困脱出マニュアル』(飛鳥新社)を上梓。 雑誌「月刊VOICE」「プレジデント」などで執筆するほか、テレビ朝日「たけしのTVタックル」「たけしの超常現象Xファイル」TBS「水曜日のダウンタウン」などテレビ出演も多数。
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