予想外の、家主による手のひら返しをくらい途方にくれる
当たり前だが、筆者はこの家なら民泊ができるから借りたのである。それで二年間空き家だった家を再生させ、毎月家賃を払い続けている。
その時入ってもらった不動産業者にも確認したが、もちろん民泊OKということだった。目の前にある物件も借りて運用してくれ、と家主が管理会社を通じて申し出てきたくらいなのである(このことは著書「
貧困脱出マニュアル」にも明記している)。
管理会社がそういう態度なら、家主に直談判するしかない。そこで契約書に記載されている横浜在住の家主に電話をかけた。約三年間住んでいるのに話すのは初めてだった。
「今まで自宅で民泊事業をやってきて、今回正式な認可をとるために家主さんのハンコが必要ということなので電話を差し上げた次第ですが……」
そのとき、家主は衝撃の返答をした。
「今までは黙認という形でしたからそれでもよかったですが、もし私が捺印するとこれは公認したということになってしまいます。公認してしまったら何か問題が発生した時に責任を負わせられますから、それはイヤです」
土壇場で裏切られたということだ。もはや家主との信頼関係は完全に崩壊した。こうなったら、出るしかない。でも、どこへ?
筆者の家は結構な人気物件で、6月15日から八月終わりまで予約が埋まっていた。立地が良かったからかホストの人柄がよかったからかはここでは論じないが、とにかく直近の予約に対応できる体制を作らなければならない。
サンフランシスコにあるAirbnbのカスタマーサービスに問い合わせた。今後の予約はどうなるのか?「日本の法律に従い、6月14日までの予約はそのままで、6月15日以降の予約は正式認可がない限り自動的にキャンセルとなります」
直近で予約している人たちには個別にメッセージを入れた。中にはそのままキャンセルをする人もいた。もちろんそれを責めることはできない。悪いのは日本政府である。
今までの人生で、これほどまでに日本人であることが恥ずかしかったことはなかった。出発一週間前に宿泊先が突然キャンセルになるとはこんな迷惑な話もない。これで「観光立国」などできるはずがない。観光庁は、東京五輪で、きっと路上に訪日外国人を泊めて「お・も・て・な・し」をするつもりなのだろう。
このまま筆者は民泊をたたむしかないのか……そんなときに、筆者の運命を大きく変えるメッセージが届いた。それは、心身共に弱り果てていた筆者を救ったのだった(続く)。
【タカ大丸】
ジャーナリスト、TVリポーター、英語同時通訳・スペイン語通訳者。ニューヨーク州立大学ポツダム校とテル・アヴィヴ大学で政治学を専攻。’10年10月のチリ鉱山落盤事故作業員救出の際にはスペイン語通訳として民放各局から依頼が殺到。2015年3月発売の『
ジョコビッチの生まれ変わる食事』は15万部を突破し、現在新装版が発売。最新の訳書に「
ナダル・ノート すべては訓練次第」(東邦出版)。10月に初の単著『
貧困脱出マニュアル』(飛鳥新社)を上梓。 雑誌「月刊VOICE」「プレジデント」などで執筆するほか、テレビ朝日「たけしのTVタックル」「たけしの超常現象Xファイル」TBS「水曜日のダウンタウン」などテレビ出演も多数。
ジャーナリスト、TVリポーター、英語同時通訳・スペイン語通訳者。ニューヨーク州立大学ポツダム校とテル・アヴィヴ大学で政治学を専攻。’10年10月のチリ鉱山落盤事故作業員救出の際にはスペイン語通訳として民放各局から依頼が殺到。2015年3月発売の『
ジョコビッチの生まれ変わる食事』は15万部を突破し、現在新装版が発売。最新の訳書に「
ナダル・ノート すべては訓練次第」(東邦出版)。10月に初の単著『
貧困脱出マニュアル』(飛鳥新社)を上梓。 雑誌「月刊VOICE」「プレジデント」などで執筆するほか、テレビ朝日「たけしのTVタックル」「たけしの超常現象Xファイル」TBS「水曜日のダウンタウン」などテレビ出演も多数。