個人のエアビー経営者を焼き尽くした「悪魔の6月2日」
そんなこんなもあり、筆者は民泊新法後もやめるつもりは毛頭なかった。6月15日までには登録を済ませないとな…と五月後半から必要な書類その他を集め始めた。
しかし、まさかの事態が訪れ、筆者は奈落の底に突き落とされることになる。それが「悪夢の6月2日」である。
筆者は6月15日の施行に向けて様々な必要な書類を用意していた。
住宅の図面と
申請書は、わからないでもない。意外に面倒なのが「
戸籍謄本」である。
「抄本」ではダメだ。謄本をとるには本籍地に問い合わせるしかない。
筆者の場合は岡山市役所だ。返信用封筒を入れた封筒を入れ、返送に約二週間かかるという。謄本には生誕時の家族全員の名前が載っているが、こんなもの民泊事業と何の関係があるのか? 自宅で全責任を負ってやっているわけだから、現住所がわかる住民票があればそれで十分ではないか。
あとは、「
破産宣告を受けていない証明書」を最寄区役所で、「
登録されていないことの証明」と「
建物の登記証明書」を法務局で取得することになる。疚しいところはないので手続きをすればすぐに取れるが、謄本と同じく何の意味があるのかさっぱりわからない。ここまでが五月末までの話である。
次に必要となるのが
消防署に赴いて図面を提出し
、事前相談記録書に捺印をもらうことになる。台東区の場合は、ほぼ形式だけですぐにハンコをもらうことができた。
そしてやってきた6月2日は、日本の歴史上ずっと残る汚点、「
屈辱の日」である。
この日、観光庁の圧力を受けたAirbnb日本支社は、筆者宅も含めてまだ
登録を済ませていない物件の登録(これをエアビー用語で“リスティング”という)を全て削除した。全体の約八割がこの動きの中で登録抹消されたことになる。
これは完全に観光庁による法律違反である。6月15日施行の法律を6月2日に適用するのは「法の不遡及」の大原則に反する。
こんなことは、ここで改まって書くのも恥ずかしい、法学部一年生、公務員試験を受ける者なら誰でも知っている基礎中の基礎である。民泊の好き嫌いを論じるのは自由だが、法律を施行前に執行したということは、つまり日本が法治国家をやめたのと同義である。
「もう1つは、法律の世界の常識として、法律の効力が施行日より前に遡及するようなことは、本来あり得ないということです。つまり、6月15日より前の段階で成立した違法施設への宿泊予約は、宿泊する日が施行日以降であろうとも、本来は問題ないはずなのです。」(参照:
民泊が大混乱!自民党と観光庁が招いたお粗末な「人災」の内情 岸博幸–ダイヤモンド・オンライン)
こうして、筆者は一気に奈落の底に叩き落された……と思っていたのだが、次回はさらに奥深い底に落ちていった話をしていきたい。
【タカ大丸】
ジャーナリスト、TVリポーター、英語同時通訳・スペイン語通訳者。ニューヨーク州立大学ポツダム校とテル・アヴィヴ大学で政治学を専攻。’10年10月のチリ鉱山落盤事故作業員救出の際にはスペイン語通訳として民放各局から依頼が殺到。2015年3月発売の『
ジョコビッチの生まれ変わる食事』は15万部を突破し、現在新装版が発売。最新の訳書に「
ナダル・ノート すべては訓練次第」(東邦出版)。10月に初の単著『
貧困脱出マニュアル』(飛鳥新社)を上梓。 雑誌「月刊VOICE」「プレジデント」などで執筆するほか、テレビ朝日「たけしのTVタックル」「たけしの超常現象Xファイル」TBS「水曜日のダウンタウン」などテレビ出演も多数。
ジャーナリスト、TVリポーター、英語同時通訳・スペイン語通訳者。ニューヨーク州立大学ポツダム校とテル・アヴィヴ大学で政治学を専攻。’10年10月のチリ鉱山落盤事故作業員救出の際にはスペイン語通訳として民放各局から依頼が殺到。2015年3月発売の『
ジョコビッチの生まれ変わる食事』は15万部を突破し、現在新装版が発売。最新の訳書に「
ナダル・ノート すべては訓練次第」(東邦出版)。10月に初の単著『
貧困脱出マニュアル』(飛鳥新社)を上梓。 雑誌「月刊VOICE」「プレジデント」などで執筆するほか、テレビ朝日「たけしのTVタックル」「たけしの超常現象Xファイル」TBS「水曜日のダウンタウン」などテレビ出演も多数。