御用メディアの大罪。新聞は「権力の監視」の役割を失った<倉重篤郎氏>

権力にすり寄る大手メディア

── 大手メディアでは、安倍政権に総理辞任を迫るような厳しい論調はほとんど見かけません。記者が権力に阿るようになった理由は何でしょうか。 倉重:構造的なものがあります。権力から情報を取ることも政治記者の重要な仕事です。そこに持つ者と持たない者との力関係の差が生じ、そこに記者の権力に対する遠慮、忖度が生まれます。  ただ、その構造にはまってしまうことは、記者と権力の緊張関係を弱め、双方の本来あるべき立場をいずれも貶めることになるのではないでしょうか。記者は正義感を失い、権力者は世論を甘く見る。理想論かもしれませんが、権力に忖度することなく、記者会見などでも鋭く切り込むことができ、なおかつ重要な情報も取ってくるのが、記者のあるべき姿だと思います。 ── 東京新聞の望月衣塑子記者など、一部の記者は政権に対して聞くべきことを聞いていると思いますが、多くの記者が遠慮しているように見えます。 倉重:かつて新聞の役割は、権力を監視・チェックすることだ、ということが共有されていましたが、最近、特に安倍政権になってからは、この常識が崩れてきました。明確に政権寄りの新聞と、政権と距離を置く新聞とに、これほどはっきりと分かれたことは、近年にはなかったと思います。  読売、産経は露骨に政権寄りになりました。もともと産経は、安倍さんの主張に近く、親しい記者もいますが、読売の場合は、社論として掲げる憲法改正という悲願を安倍さんと共有していることが大きいのではないでしょうか。昨年5月3日に安倍さんは改憲集会へのビデオメッセージで、9条1項、2項はそのままにして新たに自衛隊の存在を明記するという改憲案をぶち上げましたが、相前後して読売新聞は政治部長の単独インタビューでそれを国民に伝えました。 ── 文部科学省の前川喜平・前事務次官が、加計学園認可に関して、「総理のご意向」などと記された記録文書が「確実に存在している」と発言しようとしていたタイミングで、読売は前川氏の「出会い系バー」通いを報じました。前川氏のイメージダウンを意図した報道にしか見えません。 倉重:新聞と権力が癒着しているのではないか、という疑惑が生じました。その後、読売は社会部長のコメントなどを掲載、癒着を全面否定しましたが、新聞社としてはその基本的な信頼に関わることだったわけですからもっと徹底した自己検証を紙面化すべきだったと思います。 ── 安倍総理は、マスコミ幹部と頻繁に会食をしています。 倉重:これまでの政権と比較しても、安倍さんは頻繁にやっています。会食が現場の記者に与える影響はゼロではありません。
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自民党内からも安倍不信の声
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月刊日本2018年11月号

特集1【安倍政権の終わりの始まり】
特集2【御用メディアの大罪】
特集3【靖国神社はだれのためにあるか】
【特別インタビュー】田中愛治 「たくましい知性」を社会に送り出す