国会での議論が「出来レース」になってしまう元凶とは?<民意をデフォルメする国会5重の壁・第5回>

国会での合意形成

 国会の役割の一つに、社会にある多様な意見を提示し、合意形成することがあります。他には、内閣をつくり、チェックし、信任・不信任すること。法律を審議し、制定・廃止すること。予算を審査し、修正・決定すること。社会の課題を調査し、法律や予算に反映すること。行政運営をチェックすること。それぞれの役割は、密接につながっていて、厳密に区別しにくいのですが、おおむねこのように分けられます。  さて、国会での合意形成は、大きく2つの方法に分けられます。  一つは、政党や議員がそれぞれの意見の代弁者になり、議論を交わす方法です。内閣のチェックであれば、議員が質問し、政府が答弁します。政府提出の予算や法案の審議であれば、閣僚や官僚と議員との間で質疑応答が交わされます。議員立法や決議であれば、議員同士で議論を交わします。  もう一つは、有権者や専門家、関係者から、議員が意見を聴く方法です。意見を述べる議員でない人は、公述人や参考人と呼ばれます。これは、国会だけでなく、各地に出かけて行われる場合もあります。また、請願として、文書で意見を受ける場合もあります。  ただ、後者の方法は、しばしば形骸化していると批判されます。議案に対し、公述人や参考人などから、どれだけ厳しい意見が出ても、それによって議案を修正することはほとんどなく、原案どおりに成立するからです。  国会で意見を述べる参考人などは、政党の推薦であるため、政党の意見を補強する人選になりがちという課題もあります。請願の提出にも、国会議員の紹介が必要です。有権者の半数近い人々が無党派といわれる社会で、政党を通じる以外に、国会へ意見を伝える有力な方法がないことになります。
次のページ 
「熟議しない国会」はこうして生まれる
1
2
3