業界団体や労働組合のように、
メンバー全体の利益拡大をめざす団体を利益団体と呼びます。利益団体といっても、社会的に有害な存在でなく、民主主義社会において必要な存在です。それぞれの利益団体が個別の利益を主張することで、社会に多様な課題が提起され、課題の解決が進み、より良い社会になっていくからです。例えば、政府が過労死の防止に取り組むのは、労働組合が働く人々の共通の利益を主張した結果です。
問題は、
政党が人々の意見を集約するとき、しばしば特定団体の意見を過度に重視することです。例えば、自民党の支持団体には、業界団体から宗教団体まで多岐にわたる団体がありますが、高度プロフェッショナル制度の導入は、もっぱら経団連という有力支持団体の要望に基づくものでした。
利益団体の力の源泉は、資金と票です。とりわけ、政治献金が大きな影響力を発揮します。企業団体は、法人であっても自然人でないため、自ら投票できないものの、集票活動や地盤づくりに不可欠な多額の資金を提供できるからです。政党への企業団体献金は合法のため、直接の因果関係が証明されない限り、賄賂となりません。
ほとんどの利益団体の意思決定は、実質的に幹部主導となっています。そのため、幹部の考え方が団体の意見や献金として示されがちです。
要するに、
利益団体の幹部の意見は、一般の有権者の意見よりも、政党に採用されやすいわけです。それが、経団連や連合、創価学会のような主要政党の有力支持団体であれば、なおさらです。
有力議員として
政党の意思決定を担うための第一歩は、政党の公認候補となることです。議員歴が長くても、中村喜四郎衆議院議員のように無所属であれば、自民党への影響力を行使することはできません。
政党から公認を受けるプロセスは、どこの政党も外部から明確になっていません。形式的に政党の機関で決定されるとしても、そこまでの実質的な選考プロセスが不透明なのです。候補を公募し、選考委員会で決まるケースもありますが、その場合も、誰がどのように意見を述べ、どのような点を考慮して選考されるのかは、不透明です。
本来、政党の公認とは、その候補が、政党の理念に同意し、社会課題を解決するのにふさわしい能力や知見をもつ人物であることを、有権者に約束する行為です。公認した議員が、国政を担うのにふさわしくないと判明した場合、党として処分しなければなりません。処分しなければ、その政党は国政を担う資格がないことを意味します。
実際には、本来の姿からかけ離れ、
政党幹部の意向が、公認に際して決定的に重視されます。また、選挙区では、前任議員や地方の党幹部たちの意向も重視され、比例区では、支持団体や関係省庁の幹部たちの意向も重視されます。