電子マネーやキャッシュレス決済は悪か? 欧米での普及と高齢者への対応を調べてみた

日本の高齢者は恵まれているほう?

 続いてヨーロッパではどうなのか? ドイツやポーランドといった中欧・東欧でもかなりキャッシュレス機能が普及している印象を受けたが……。 「現金しか使えない人にとって、日本は言うほど酷くない。老人にとってはヨーロッパのほうがはるかに大変だと思います。現金払いだと倍の料金を払わなければいけない、なんてことも珍しくありません。なので、代わりに子どもがいろいろと世話します。子どもと言っても、50~60代がそれより上の世代を手伝うという意味ですが……」(ノルウェー人)  70代以上では対応できない人も多いそうだが、それ以下の世代では職場で日常的にパソコンやインターネットを使っているため、特に問題はないという。 「ヨーロッパでは路面電車などの車内で一切現金が使えない国もあります。銀行もオンライン限定だったり、キャッシュどころかカードレスで、アプリで支払ったり。クレジットカードはチャージがかかるので、デビットカードを使うことが多いです」(同)  また、お隣中国でも「WeChat Pay」や「Alipay」などの電子マネーが普及。スマホを使った決済機能で、銀行カードとの連携でデビット機能を加えられる。急速にキャッシュレス化が進んでいるが、その実態について在日中国人は次のように語る。 「北京や上海と言った大都市以外では、キャッシュレス機能を使わない老人は多いです。都会では老人や地方出身者がキャッシュレス難民になっていますが、そういった人々への対応と人民元の地位低下を防ぐため、現金決済が義務づけられました」  このようにどの国でも世代間でキャッシュレス機能への対応には差があるようだが、いずれにしても普及の波は加速するばかり。他国と比べて日本での導入が遅れていることは否めない。  今行うべきは「前に進むか否か」の議論ではなく、前に進んだうえで、「遅れをとっている人をどう助けるか」の議論だろう。ハードの進歩に追いつけない部分は人というソフトで補う……。テクノロジーが発展している今こそ、普遍的な「助け合い」が必要なのではないだろうか? <取材・文/林泰人>
ライター・編集者。日本人の父、ポーランド人の母を持つ。日本語、英語、ポーランド語のトライリンガルで西武ライオンズファン
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